終盤 その3
できましたー
次の一撃で決める。そう覚悟に決めた私は、右手で握り拳を作り、その握り拳の中にオーラを集めつつ、回転させ始める。
(あの時、私は直前までオーラを拳の中で回転させる練習をしていた……なら、意識が朦朧としていたあの時、通常の私では発生することのないあの光は、回転させることによって生まれた可能性がある)
そもそも、彼と訓練する以前の私では、体から光を発射することはおろか、光を生み出すことすら不可能だった。
なら、あの光を生み出している原因は、彼が神奈川派閥に来てから起きた変化によるもので間違いはないだろう。
つまり、彼から与えられたこの回転。これが光を生み出した原因だと考えたのだ。
後はこれを成功させるだけだ。
私はそう決意すると、そっと目を閉じ、体内にあるオーラの流れだけに集中する。
(オーラを……体から……手の中に……)
体中から入ってくる情報を、オーラの流れる感覚のみに絞ることにより、オーラの動きをより微細に、より精密に感じ取って移動する。
そのかいあってか、胴体から腕を伝って、手の中にオーラを溜めるのにそこまで時間はかからなかった。
後は回転。俺は慎重に、かつ迅速に手の中にあるオーラを回転させ始める。
オーラナックルを打ち込んだとは言え、いつどのタイミングで海星さんが起き上がってくるかわからないからだ。
(そーっと……そーっと……)
私はまるで割れ物を扱うかのように、丁寧に丁寧にオーラを回転させ続ける。
今までにないぐらいの集中力から生み出される回転は、訓練してきた中でも1番の高速回転をしており、回転することによるエネルギーからか、そっと目を開くと、手の中から淡い光が溢れ始めていた。
(やっぱり思った通り……! あの時の光はオーラを回転させた時の光だったんだ!)
さっきまでの疑惑が、私の中で確信に変わる。これをこのままオーラナックルの要領で発射することができれば、この試合を一瞬で終わらせることが可能だ。
「ぐぬ……やってくれたなお前ええええぇぇぇぇ!!!!」
が、海星さんもチェス隊メンバーの1人。私が発射しようとする時には、しっかりと意識を取り戻し、両手を合わせて何かを水で作ろうとしているようだがもう遅い。発射準備はすでに完了しているのだ。
この光輝くオーラの固まりを発射すれば、どんなリスクが待っているのかは定かではない。しかし、どっちにしろ撃たなければならない。
「いくぞ……!!」
私は満を辞して、体を弓のようにしならせ、右拳を頭の後ろにセットし……
「オーーラ……ナックル!!!!」
光り輝くオーラの固まりを、海星さんに向けて発射した。