中盤 その9
なんと意外と投稿できた。
「す……すごいすごい!! あそこから一撃入れたよ!!」
「……びっくりー」
「すごいです先輩! すごいですー!」
「ふん……石ころでも磨けば光るものですわね」
「おー! やったんだなー!!」
これまでの1連の流れに、観客スペースからは大きな声援と賞賛が溢れ出ていた。
それは俺の周りで観戦しているチェス隊たちも例外ではなく、あの王馬ですら褒めるところを見ると、袖女の行った行動がいかに素晴らしい動きだったかがわかる。
そして、そんな素晴らしい動きを見た俺は……
「…………」
驚きのあまり、何も喋ることができずにいた。
あの袖女が、あの状況から抜け出すどころか、海星大河が仕掛けた知略に長けた攻撃を全て凌ぎ、回避しきり、あまつさえ反撃を加えた上、袖女の得意な距離まで海星大河を吹っ飛ばした。
極めつけは予備動作のカウンター。あれを見た時、思わず声が出そうになった。
あれはおそらく、俺と最初に模擬試合をした時に使ったオーラビームの応用技だろう。
指摘した点として、オーラビームを織り交ぜた戦法は袖女に合わないと指摘してから、使っていなかったが、まさかオーラビームを工夫して自分の戦い方に合ったものにここまで昇華させたとは思わなかった。
(オーラビームに至っては……多分、袖女の独学か……!)
これを努力の成果と言わずして何と言うのか。そう考えた瞬間、頭の中で今までの袖女の訓練の記憶がフラッシュバックし、胸の中から何かがこみ上げてくる。
これが成長した生徒を見た先生の気持ちか。卒業式の日に先生が号泣する理由がなんだかわかった気がする。
(しかし……ここからどう攻撃に転じれるかが問題だ……)
俺なら、相手の能力の詳細がまだ判明してはいないため、一旦離れて相手がどのような行動をとるか、待ちの姿勢をとるが……
訓練所の中を見ると、俺の予想に対し、袖女は拳を振り上げすかさず攻撃の姿勢をとる。
(そうだ! それでいい……!)
さっきのは、あくまで俺ならそうするという考え方だ。今の袖女の状況は俺とは違い、お互いに人柄やスキルを知った状態での戦いだ。袖女の中で攻撃すると言う結論が出た以上、それに異議を唱える必要性はない。
(あの攻撃を避けられて、海星大河はかなり精神的にキているはずだ……そこへ休む時間を与えず、間髪入れず攻撃するのは十分アリな手だ)
そして、この距離……この距離さえ維持できれば、勝利は確定的だ。
このまま維持できれば。