中盤 その6
諸事情により、今週だけ休日は1日1話、もしくは2話になります。
楽しみにしてくれていた方々、非常に申し訳ありません……!
来週からは休日1日3話投稿に戻りますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
「水質変形『大剣』!」
私は手のひらに水の剣を出現させ、浅間に斬りかかる。
端から見れば、せっかく霧のフィールドを作って、蛇のピット器官、土竜による地面からの下半身固定で、明確な有利を作ったにも関わらず、なぜその圧倒的優位を捨て、浅間からも視認することができてしまう距離に近づいて攻撃を仕掛けたのか、それには明確な理由があった。
一見、あらゆる策を組み合わせて奪い取った優位に見えるが、浅間にはこの状況に対する明確な回答を持っているのだ。
それが『オーラバースト』である。
拳などの発射台を必要とせず、体表から全方位にオーラを噴出させる浅間唯一の全体攻撃である。
使用するオーラ量がどうしても多く、浅間自身はあまり使いたがらないが、私としては、使われるとどうしようもなく厄介な技の1つであった。
私の水獣は作るための時間をそこまで必要とせず、自分と同じ位のサイズの物を水で生成するのなら、大量に作るとしても1秒とかからない。
だが、水で作っている分、その耐久力は貧弱の一言であり、1発殴られただけでもその形を維持できず、殴られた部分から崩壊してしまう。
無論、耐久力がないということは、『縦』としての攻撃に非常に弱い。どれくらい弱いかと言うと、『縦』の威力がないに等しい浅間のオーラ攻撃でも、ある程度貫通してダメージが通ってしまうほどだ。
そして、その弱点は浅間にも知られてしまっている。私が浅間のオーラの弱点を知っているように、こちらの弱点も筒抜けになってしまっているのだ。
つまり、先の蛇の攻撃で、水獣による攻撃を仕掛けられていると察知された以上、次の瞬間には容赦なくオーラバーストを発動されることは間違いない。
そうなれば最後、水獣を木っ端微塵に破壊されたあげく、水蒸気で作ったこの霧も、オーラバーストの勢いで爆発四散。ここまで策をこねくり回して作った有利も水の泡になってしまう。
ならば、もう蛇で細かなダメージを与える必要性は無い。霧もかき消されると分かっているなら、あえて自分から飛び出し、この試合を決めるほどの強力な一撃を叩き込むのが最善手なのだ。
(当たれば……勝ちなのよ!)
そう、当たれば勝ちなのだ。
当たれば
私の振るった水の剣は虚しく風を切る音を響かせるだけだった。