中盤 その4
水のバリアから発射された水鉄砲はただの水鉄砲ではない。10リットル以上ある水を米粒サイズにまで圧縮し、そこにスピードも加えた超高密度圧縮弾だ。
威力や貫通性能で言えば、プラスチックの水鉄砲はおろか、私のオーラナックルなど鼻で笑われてしまうほどの威力だ。
こんなものを受けてしまえば、受けた部位から衝撃が広がり、体に巨大な穴が開いてしまう。
かといって回避しようにも、この距離では脳から体に指示を伝達する前に、超高密度圧縮弾の餌食になってしまうことだろう。
というか、この威力の攻撃を受けてしまえば間違いなく……
(死っっ……)
死ぬ。その2文字が頭をよぎった瞬間、私の体は脳から神経をつたって体に指示を出すことなく、まるで別の生き物かのように、超高密度圧縮弾に当たるギリギリのところで回避することに成功した。
「ウソ!?」
海星さんも、勝負は決まったと確信していたのか、さっきまでの気味の悪い笑みは鳴りを潜め、驚愕と焦燥の色が表情に色濃く反映されていた。
(これは……!!)
対して、私は体が勝手に回避行動をとった瞬間、これは間違いなく彼との訓練のおかげだと、確信めいた何かを感じとっていた。
人がこういう表情をしている時は、驚愕と焦燥のおかげで決まって頭が動いていない。相手の頭が動いていない今こそ、こちらのアドバンテージを稼ぐチャンスだ。
私は頭をフル回転させて、どうにか仮説を立てるため思案する。
あの超高密度圧縮弾は、存在自体は見たことがあるものの、その時は普通に手から発射していた。水のバリアから発射されるのを見たのは、今回は正真正銘初めてである。なので、日ごろの訓練の結果獲得した新技だろう。
(う〜んと……え〜っと……)
つまり、その超高密度圧縮弾を作るための水は、水のバリアから抽出しているわけで……
(あっ……そうか……)
つまり、今張られている水のバリアはさっきとは違い、水の量が減っているわけだ。
なら、さっきよりも脆いのでは?
水のバリアから超高密度圧縮弾を放った後は、水のバリアに使われている水量が減るため、放つ前よりも脆くなる。
その仮説を思いついてすぐ、私は右拳にオーラを溜め、機能停止している海星さん目掛けてオーラナックルを発射した。
「喰らえっ!!」
そしてその仮説は見事に的中し、水のバリアを軽々と破壊。その中にいた海星さんを吹っ飛ばすとはいかないまでも、その衝撃で地面にごろごろと転がすことに成功した。
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