中盤 その2
私の目の前いっぱいに魚の群れが広がる。それは教科書の写真で見たのとそっくりそのまま、幻想的な世界が広がっていた。
しかし、その景色に現を抜かしている暇は無い。私は正拳突きの構えを崩さず、いつでもその拳を前に突き出せる状態になる。
観客スペースにいる人間も、私と戦っている海星さんも、ましてや彼も、そのままこの拳を前へ突き出し、オーラナックルを発射すると思われているだろう。
実際、私もそうした。
(……今は違いますけどね!!)
私は確かにそのまま技を打ち出す。しかし、拳を一気に発射するのではなく、自分を中心に拳を円形にグルリと一周させながら拳を振った。
例えるなら、円盤投げの容量に近いだろう。
しかし、普通の円盤投げとは訳が違う。オーラを乗せたその拳が通り過ぎた場所は、まるで雪崩のように魚群が押し流されていく。その場所は本当に何も残らず、もともといなかったのかと錯覚してしまうほどだ。
これが私の新技……!! 『ブルドーザー』だ!!
思いついたきっかけは、訓練の中でオーラの性質を再確認している時だった。
私のオーラは『面』として広い範囲での攻撃という点では優秀だが、『縦』の攻撃、つまり貫通力が恐ろしいほど低い。彼との戦いの時に盾として使われたジャケットすら貫通してダメージを与えることができない時点で、その貫通力のなさはお察しだろう。
その致命的な弱点のせいで、私は今まで苦汁を舐めさせられてきた。
しかし、逆に言えば、その致命的な弱点さえ克服することができれば、もう弱点と言える弱点はない。あえて言うならオーラの溜める時間ぐらいのものだろう。
なら、それを補うにはどうしたらいいのか。考えた結果、たどりついたのが『面』としての攻撃を『縦』の攻撃に再利用することだった。
オーラを拳を縦に伸ばし、普通ならそのまま飛ばしていたオーラに意識を向け、何とかオーラを維持。そのまま伸ばしたオーラと繋がっている方の腕を、そのまま円盤投げのようにグルリと回す。そうすれば箒に巻き込まれるホコリのごとく、奥から敵を絡め取って『縦』の部分をカバーする。
この『ブルドーザー』のおかげで魚群の表面部分だけしか破壊できなかったところを、奥から絡め取りながらカバーできる。
(これなら魚群を消しさりつつ、その奥に隠れているであろう海星さんを攻撃できる……!)
しかし、期待を込めて放ったその攻撃もむなしく、空を切ることになる。
「そうきますか……!?」
「……水質変形『球体』」
海星さんを中心に、水の球体が発生し、その体を攻撃からガードしていた。
次は深夜1時に投稿〜