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序盤 その2

 虎との距離がゼロへ到達し、袖女と虎との近接攻撃が始まる。


 先制攻撃は虎。その鋭い牙を使い、容赦なく袖女の腹部に噛みつこうとする。


 しかし、牙での攻撃は強力な分、頭を物理的に動かさなければいけない弱点がある。そのおかげで予備動作が見え見え。しっかり戦いに集中していれば、余裕で対処できるレベルだ。


 俺の指摘通り、しっかりと戦いに集中できていた袖女は虎の先制攻撃を虎の鼻から目にかけての部分を右手のひらでしっかりと押し込み、攻撃を止めてから左拳で虎を殴り飛ばした。


(よし!)


 袖女の完璧な対処方法に、思わず右手で拳を作ってしまう。


 それほどに袖女の対処の仕方は完璧であり、俺も同じ状況だったら同じ行動をとるほどのものだった。



 しかし、それだけに――――



(油断するな袖女!! すぐに次が来るぞ!!)



 次に来るであろう不意打ちに対応できるか、それが心配でならなかった。









 ――――









 私に攻撃してきた虎の行動。しかし、それはとても拙く、チェス隊同士の戦いについていけるレベルではない。所詮作り出されただけのただの水ということか。


 そして、次に来る攻撃も――――


(っと、やっぱり)


 攻撃したことにより、前かがみになった頭をすぐさま横に動かすと、後ろから水色の何かがほっぺたを掠めた。


(おそらくは鳥の水獣……やっぱり不意打ちを狙ってたんですね)


 あまりにも予想通りな不意打ちだったため、私の心に焦りはない。むしろ私は戦場の中にいると自覚させてくれる要因となり、頭の中が戦闘モードへと切り替わった。次からはさらに冷静を保ったまま戦いを続けることができるだろう。


「ちっ……最下位のくせに……」


 私が不意打ちを避けたことが気に入らなかったのか、海星さんは周りに聞こえないように舌打ちをする。ちゃっかり私にだけは見えるようにしているところに女の怖さを感じた。


「ふん」


 同じ女として、その心はわからなくもない。ただ、私には戦闘中に嫌味をかける暇はない。


 私は右拳にオーラを溜め、正拳突きの構えを取る。皆さんお馴染みオーラナックルの構えだ。


「……!」


 それに対し、海星さんは即座に反応。手のひらを前に突き出し、そこから水獣を召喚する。


「水質変形『魚群』」


 呼び出された水獣は魚の群れ。魚の群れは私の視界を覆うように横に広がっていく。この魚の群れに隠れながら、本体を好きに移動しているに違いない。


 この構えがブラフだと知らずに。







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