急な遭遇 その3
次は深夜1時に〜
「ほんと!? よかった! じゃあこっちきて!」
了承の返事を聞いた旋木天子は興奮した様子で、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた後、こちらの手を無遠慮に掴み、他のメンバーがいるであろう方向へと体ごと引っ張ってくる。
これは俺にとっても賭けだ。弁論バトルが得意な方ではないし、どちらかと言えば肉と肉をぶつけ合う肉弾戦の方が好きな人間。もしチェス隊メンバーの中に弁論バトルが得意な奴がいれば、一瞬で詰むことは間違いなしだろう。
何もやらずに袖女のプロモーション戦での勝率が下がるか、俺がどうにかしてプロモーション戦で勝利できる可能性を残すか、この2択の中から少しでも可能性がある方を選んだに過ぎない。
(失敗しても文句言うなよ……)
「おーい! みんなー! 来たよー!」
少しすると、旋木天子が声を上げ、誰かに対して言葉を放つ。それを聞いた俺はその声に呼応し、旋木天子が言葉を放ったであろう方向に目を向けた。
「あ、先輩来たぁ!」
「……遅い……ん? その後ろにいる人……」
「あ、あいつは……!」
「……んあ? あの人は誰だなー?」
そこにいたのは、王馬との戦いの時にも見た旋木天子含む3人組の内2人。紫色の髪を無造作に生やし、目が常に半目になっている女と、栗色の髪をした明らかに後輩って感じの女。
それに加え、黒のクイーンとの対談の時に見た赤髪ショートカット女に……神奈川派閥に来てから初めて戦った相手、誇り高き白のビショップ(笑)王馬沙月さんだ。
「せ、旋木……なぜそいつを?」
「見かけたから! 誘おうと思って!」
驚くほど青い顔をした王馬は、何やらプルプルと震えながら旋木天子に問いかける。それに対して、王馬の思いが全く通じていないのか、何の屈託のない笑顔で返答する。ここまでくると普通に面白い。
俺は王馬の肩に手を置き、完全に見下した顔を作って一言
「よ、ろ、し、く」
「…………」
その時に見た王馬の絶望した顔は忘れることはないだろう。