急な遭遇
すいませんー! 昼は用事があって投稿できませんでした! お詫びに月曜日には2話投稿します!
では、どうぞー!
訓練所に向かっていった袖女を見送った後、俺は訓練所の外からぐるりと回り、ガラス張りの訓練所の中を観戦することができる観客スペースに移動する。
(……結構いるもんだな)
観客スペースには、俺と王馬との戦いの時ほどではないにしろ、かなりの人数が集まっていた。
「あ! いた! おーい!」
「……んお?」
どこからか俺を呼ぶ声が聞こえたので、あたりをキョロキョロと見渡すと、青い髪の女が小走りでこちらに向かってくるのを発見した。おそらくあの女が俺を呼んだ声の持ち主だろう。
「もー! さっきから読んでるじゃん!」
「は……お前は確か……」
一瞬誰だと思ったが、目の前まで来て顔が確認できるようになり、どこかで見たことがある女だとわかると、頭の中にある記憶を掘り起こし、どこで見たことがあるのか、何とか思い出した。
「……グリードウーマンの時の?」
「そそ! 私、旋木天子って言うの! よろしく!」
(旋木……天子……?)
その名前を聞いた時、何か喉の奥に引っかかる感覚を覚えたが、その引っかかりの原因が何なのかはわからない。おそらくはそこまで印象の深い思い出ではないのだろう。
「俺の記憶ではお前と会うと約束した覚えはないが」
「そりゃ約束してないからね!」
胸を張って堂々と宣言してくる。そこまですごいことではないと思うのだが。
「はぁ……で、何の用だ?」
「ひよりと海星さんが試合するって聞いてさ! みんなを連れて見に来てみたら君がいたから、一緒に見ようと思って!」
(……なん……だと……?)
急に神奈川派閥に乗り込んできて、自分より強いとわかっていながら嫌味を一切言わず、逆に向こう側から話しかけてきて同じチェス隊の試合を見ようとにこやかな笑顔で誘ってくる寛容さ、そしてそのコミュニケーション能力。
(よ、陽キャだ……!!)
あまりにも陽キャすぎる。あの桃鈴才華にも負けずとも劣らないコミニケーション能力。その包容力に一瞬、この女が天使に見えた。天子だけに。
「……ふぅ」
くだらないタイムは終わり。ここからは真面目タイムだ。
冷静に考えて、ここで旋木天子と一緒に観戦するのは得策ではない。
正確に言うと、旋木天子だけと一緒に観戦するのは問題ではない。問題は旋木天子の口から溢れた言葉から推測できる他の人間の存在だ。
(『みんなを連れて』か……)
みんなを連れてと言う言葉から推測するに、もっと他の、おそらくチェス隊メンバーと一緒に来ていると考えられる。
(これが本当だとすると……俺にとっても、袖女にとっても、少しまずいな……)