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また負けたー!

 どうぞ!

「……は?」


「起きたか?」


 ……知っている天井だ。そう思いながら体をむくりと持ち上げると、黒のキングがベンチに座り込み、こちらをじっと眺めていた。どうやら俺はベンチの上で寝込んでいたらしい。


 と言うことは、俺は負けたと言うことか。砂団子でなんとか気をそらすことに成功したと思ったのだがな……


 どんな攻撃をされたのか、はたまたどんなスキルを使ったのか、皆目見当もつかない。今すぐにでも質問攻めにしたい衝動に駆られるが、俺がまず黒のキングに聞く内容はそれではない。


「……どうだった? 俺の戦いは」


 まずは俺と戦った感想。全体としての総評を聞くべきだ。自分の主観で戦い方を模索するよりも、戦っている相手の目から見える他視点から指摘してもらった方が、手にできる経験値ははるかに多い。


 黒のキングもそれを理解しているらしく、少し目を閉じた後、意を決したように目を勢いよく開き、俺と戦った感想を述べ始めた。


「……すばらしい。その一言に尽きる。僕を目の前にしても戦う意思を消さない戦いに対する真摯な態度もいい。それが気持ちだけではなく、行動にも表れているように感じたな。特に土を使った壁と砂団子。あれには驚かされた。いざと言う時の起点も効いていて、久方ぶりに楽しめた」


「お、おう……そうか……」


 黒のキングの口から出てきたのは、俺の戦い方を褒める称賛の言葉。負けたのに賞賛を送られるとは思っても見なかったので、顔を少し赤く染め、多少なりとも照れてしまう。


 が、黒のキングの言葉はそこで止まらなかった。


「……が、駄目だったポイントもある」


「……ああ」


 ついに来た。その言葉が俺の脳の中で闊歩する。自分が強くなるにおいて、さっきまでの黒のキングの言葉のように、肯定的意見だけを耳に入れるよりも、自分が正しいと思ったことの逆、否定的意見を耳に入れた方が、自分の凝り固まった脳がほぐされ、さらに視野が広がる。


 今の俺にとって、強くなるという方針にとって、他人からの否定的意見は貴重であり、大事な伸びしろを認識することができる『超』大事な意見なのだ。


「まず、そもそもの戦い方だな。とにかく自分の安全を確保してから攻撃したいと考えすぎ。あんな動き方をしていたら、対戦相手にお前の考えていることが簡単に読まれるぞ?」


「なるほど、確かに……」


「これ以上強くなりたいなら、ダメージ覚悟で突っ込む戦力も視野に入れることだな」


 黒のキングの意見を聞き、確かに自分の安全を確認しすぎだと自覚する。


 確かにどうしようもない時や、何が何でも勝たなければならない時以外は、自分の安全を確保してから攻撃を行っている。


 黒のキングとの戦いでも、俺は黒のキングから溢れでる異様なオーラと攻撃限定で発動する一瞬で距離を詰めるスキル、この2つが一体何なのかと考えてばかりで、攻撃に全く転じなかった。


(……確かに、あのままじゃ勝てるものも勝てない……)


 戦いにおいて、防御や回避も超重要な項目である。だが、そればかりでは負けないだけで絶対に勝てはしない。さっきの戦いがそれのいい例だろう。自分の安全を確保するのに夢中で、勝利への道筋を考えようとしなかった。


「…………」


 己の明らかな未熟さ、それはありありと痛感させられた。


(もっと……)


 しかし、具体的な課題が分かった以上、それを磨いていけばいい。何を鍛えればいいのかわからなかった少し前よりもよっぽどマシだ。


(もっと……強さを!!)


 戦った後なのに、俺の体はどんどん熱を帯びていった。


 


 


 

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