VS黒のキング
次は明日の昼に投稿
やばいワクワクする。
黒のキングを見て思ったことはその一言のみであった。
(強い……! のは当たり前だが、それよりも……)
強い人物と向かい合って戦う時、その人物がどんな性格でも、強さがその人物を包むベールとなって具現化する。それはどんな条件下でも関係なく、目の前に立った全ての人の目に映るものだ。
袖女や桃鈴才華、訓練相手になってもらっていた白のキング。そしてあの牛にもまとわりついている強さの証。
しかし、目の前にいる黒のキングは強さと同時に何か別のものも感じられる。
純粋な強さとは違う。もっと濁りきっていて、欲に溢れている。それにはまるで、人間の本質が一糸まとわず表に出ているかのようで――――
「――――っ! ぶね!?」
その瞬間、頭の中で蛇にとぐろを巻かれ、首を締め付けられるイメージに襲われた。俺はそれに我慢できず、反射的にスキルを使用し、黒のキングを中心に半円を描いて回避する。
「ホォ……今のを防ぐか……」
ついさっきまで自分がいた場所を確認すると、そこには拳を地面に降り抜いた黒のキングと、その拳によって地面が隆起し、大きなクレーターがあった。
(……っ!?)
その攻撃を回避し、一息つけるかと思ったが、黒のキングからまたしても"別の何か"が溢れ、脳内を無理矢理動かされ、勝手にイメージが湧き上がる。
次なるイメージは蛇ではなくライオン。その強靭な爪と牙で喉を掻き切られるイメージが湧き、再び反射的に回避行動をとってしまう。
回避先は後ろ。反射を発動し、後ろまで一気に移動する。
元いた場所には当然と言わんばかりに、黒のキングと大きなクレーターが鎮座していた。
「……なんだ。これ」
目の前に広がる光景に、思わず俺は思っていたことを口に出してしまう。
今まで、俺が繰り広げてきた戦いは、内容はともかく、ちゃんと戦いとして成立していた。俺は戦いをしているんだと、自分も相手もそう思うことができるものだった。
しかし、これはなんだ。黒のキングと行っているこれは一体何なのか、頭の中がぐるぐると回転を始めるが、未だに結論は出ない。
「……ふん」
(……どうした? 動け!)
白のキングとは行動の意味が違うだけで、同じように瞬間移動を使ってくる。だが、白のキングとは違い、黒のキングの瞬間移動には初速がある。一瞬にして消えるわけではない。ほんの少しの再発動時間があるのだ。
そして反射と闘力操作を使ったスピードなら、その再発動時間の隙を突くことは容易に可能。いつもの俺ならすぐさまその考えを実行に移し、体動かしている。
が、今の俺は動くことすらままならなかった。
(……ぐ、なんで……!?)
全身が金縛りにあったかのように動かない。
授業中に腕枕で寝た後、腕の感覚がなくなったあの瞬間と同じような感覚が俺は全身を襲っていた。
俺としては、すぐさま攻撃に転じたいが、カチカチに固まった体がそれを許さない。その隙を黒のキングが見逃すはずもなく――――
「――死ね」
その一撃が、鼻に触れるほど近くにまで接近し、もう逃げられない距離となった。
ブックマークしてくれると飛び跳ねます。
なにとぞよろしくお願いします〜