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大阪派閥は今

 少し時は遡り、黒のクイーンとの対談と同じ時刻、大阪派閥での事。


 大阪本部の最奥、ホルマリン漬けにされた動物たちが容れられているフラスコ状のようなものが大量にある部屋。その部屋の中では、医師の服を着た2人の男がパソコンとにらめっこしていた。


「……ふぅ、やーっと終わったよ! ネーリエン」


「そうだな。ベドネ」


 青年のような話し方をするのはベドネ、生意気な口調の方がネーリエン。その2人は仕事をやっとこさ終えたようで、腕を大きく上に伸ばし、背骨をポキポキと鳴らす。


「全く……黒ジャケットめ! あいつにはいろいろと仕返しをせんと収まらん!」


 ネーリエンが声を荒らげ、黒ジャケットへのイラつきをあらわにする。どうやらこのハードスケジュールには、黒ジャケットが関わっているらしい。


「仕方がないよ。十二支獣が4体……ヤクザ殲滅のために送り出した虎を含めれば5体も殺された。さらにネームドであるタウラスも重症。結果だけ見れば大阪派閥を揺るがす大損害だからね〜」


 声を荒らげ、眉間にしわを寄せているネーリエンに対し、ベドネは顔をニヤつかせながら、まるで思い人に思いを馳せるように言葉を述べる。


 その姿にネーリエンは反感を覚えたのか、ベドネの言葉に反論する。


「だが、いくらなんでも納得しなさすぎだろあのお偉いさんども! 鼠だけで黒ジャケットを始末できたんじゃないかとか言われた時は耳を疑ったぞ!? 神奈川派閥と東京派閥の精鋭兵士たちが集まる同盟会議から生き残った男である時点で鼠如きに止められるわけないだろうがクソ!!」


 ネーリエンは大臣たちに言われたことをよっぽど根に持っているのか、口から土石流のように悪口が溢れ出る。ベドネはそれを見て、ため息を1つ吐き、呆れたような表情を取る。


「もうその愚痴は何回も聞いたよ。ネーリエン。過去ばかりを思い起こしても仕方がない。もっと建設的な話をしようじゃないか」


「あ? 元はと言えばお前が……いや、そうだな。すまない」


 ベドネの言葉に自分を取り戻したのか、ネーリエンは冷静さを取り戻し、ベドネに謝罪の言葉を述べる。


「大丈夫だよ。それよりも……これを見てくれ」


 そう言いつつ、ベドネは自分の机の引き出しからとある資料を取り出し、ネーリエンに手渡す。


 ネーリエンは不安な顔をしながらも、その資料を受け取り、内容に目を通していく。


「……っ!? これは……一体どうやって入手した?」


「"東京派閥"に良い理解者がいてね……仕事の傍ら、情報をこちらに流してくれたのさ」


「しかし……これはなんとも……」


 ベドネの話を聞きながらも、ネーリエンはその資料から目を離すそぶりを見せない。それどころか、そこに書いてある文字列を一語たりとも見逃さんと言わんばかりに、資料やな目を近づける。


「ああ、わかるよネーリエン。科学者であれば、それを一目見てしまえばもう目を離せない。僕もそうだったようにね……」


 その気持ちが理解できるのか、ベドネはその行動を指摘せず、むしろ友人と感情を共有できたことに嬉しさを感じているようだった。


 しかし、ネーリエンにはある1つの懸念点があるようで、不安に顔を歪めながら、ベドネに対して問いかける。


「だが、この技術力。我が大阪派閥で再現できるかどうか……」


 大阪派閥は技術力に関してトップクラスの力を持つ派閥だが、それは生物学に限っての話。単純な機械系統の技術では、神奈川派閥どころか東京派閥にすら遅れをとってしまう。


 そんな技術力では、この資料に書かれている"兵器"を作り出すのは到底不可能。ネーリエンの優秀な頭脳がそう結論を出したからこそ、声に出してしまった言葉だった。


「問題ないよネーリエン。僕には秘策がある」


 ベドネはパソコンに向き直り、数回にわたってキーボードを叩くと、その画面をネーリエンに見せた。


 その画面を見たネーリエンは、即座に結論を出す。これならできる。パソコンの画面に写っているものを現実に起こしてしまえば、十分にどころではない。量産体制すら整ってしまうほどの技術力が手に入る。


「……さぁ始めようネーリエン。僕らの国家転覆だ」







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