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きっかけ

 来た!

 離れていく彼を見送りつつ、私は隣にいる隣に命令を飛ばす。


「凛、"監視型魚雷"で彼を追跡して」


「了解しました」


 凛は私の命令に疑問を持たず、私に従ってくれる。つくづく良い部下を持ったと思わせてくれる。


 私も凛に負けないよう、黒のクイーンとしての責務を全うしなければ。


「みんな、もう夜になるわ。プロモーション戦も近いし、こんなところで油を売ってないで部屋に戻りなさい」


 チェス隊全員に聞こえるように言うと、皆は素直に従い廊下の先へバラバラになっていく。


(……そろそろね)


 そろそろ凛の魚雷が発射された頃だろう。私は瞳に期待を含め、凛のいる方に振り向く。


「……監視型魚雷を飛ばしました。これから1時間の間は自動追尾します」


「ええ、ありがとう」


 凛は私の期待を裏切らず、監視型魚雷を発射してくれた。全く、つくづく良い部下だ。


 しかし、このまま何も話さずにいるのも良くないのは事実だ。さすがの凛とはいえ、上司にやらされている行動に自分の気持ちを抱いているに違いない。それをやらせている理由を教えないままでいると、いつか信用を失ってしまうかもしれない。


(……せめて凛にだけは教えておいた方が……)


 最初は1人でやってみせると意気込んでいたこの問題。しかし、この対談を得て、自分が思っているより闇深いものだとわかった。


(私の予想が正しければ……)


 もう、私1人で何とかできるほどのものではない。


「……凛、少し話があるのだけれど」


「はい」


 チェス隊全員がいなくなったのを確認すると、凛とともにさっきまで田中伸太と対談していた相談室に入り、私の知る限りのことを全て話した。


「……なるほど、田中伸太は黒ジャケットかもしれないと……」


「飛躍した考えだというのは理解しているわ。でもどうしても知りたいの。彼のことを……」


 私の話を全て聞いた凛は、目を見開き、アゴに手を当て、考える仕草を取る。


「斉藤様……そこまで彼を……」


「ん? 何か言った?」


「いえ、なんでもありません」


 凛は全く動かない鉄仮面をこちらに向け、何でもないと答えてくる。凛の方から何やらボソボソとつぶやく声が聞こえたような気がしたのだが、どうやら私の聞き間違いだったらしい。


「そうと決まれば、私の執務室で作戦会議ね。魚雷の映像は録音してる?」


「ええ、もちろん」


 凛さえいれば、今まで欲しくても手に入れることができなかった情報が向こうがわから寄ってくる。今もなお相手の情報を入手していると思うと心が躍る。


 決して表情には出していないが、内心ルンルン気分で執務室までの廊下を2人で歩いていると、とある人物が声をかけてきた。


「あの! 少しお時間よろしいでしょうか!」


「……ん? あなたは……」


 そこにいたのは、白い髪が特徴的な子。同盟会議以前に神奈川派閥に在住していた者なら、知らぬ人はいないであろう若きスーパールーキー。


 彼女はハッと何かに気づいたように表情を変化させると、姿勢を正し、敬礼の姿勢を取り、自己紹介を始めた。


「申し遅れました! 白のポーン、田中イズナと申します!」


 神奈川兵士になってから、1ヵ月という短い期間でチェス隊にまで上り詰めた天才、田中イズナが現れた。






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