対談 その6
俺は前のように自分から墓穴を掘るのを防ぐため、考えなしにすぐさま答えず、この質問の意図を見つけ出すため、思考回路をフル回転させた。
(この質問の意図から考えないとな……)
まず、この質問に答えることによって黒のクイーンが得ることのできる情報は、俺がどこで寝泊まりしているのか知れる点……だが、そんなことを知ったところで、黒のクイーンにさほどプラスは無いように思える。
(……いや、違う)
俺のホテルの場所を特定して、監視を……?
(だが、監視をつけるのなら、こんな監視をつける気まんまんの質問なんてするか……?)
……ダメだ。どうしてもこの質問をする意味が理解できない。
もう少し考えれば答えが出るかもしれないが、あまり時間をかけてしまうと、黒のクイーンに何か感づかれる可能性もある。
(……とにかく、この質問に対する返答を考えないと)
この質問に対し、仮に俺がホテルで泊まると答えたとしよう。そうなれば、黒のクイーンは間違いなく俺がどこのホテルに泊まっているかまで聞こうとするだろう。
そう聞かれてしまったら最後、いくら話をはぐらかそうとしても、なぜ答えられないのかを聞かれてしまう。現状、その返答に対する答えを俺は持ち合わせていない。
もしどうにかして答えを出すことができたとしても、そもそもなぜ兵士施設があるのにホテルで泊まるのかを聞かれて終わりだ。
(……自分で考えてみても、施設があるのにわざわざホテルに泊まるって違和感バリバリだもんなぁ)
なので、「ホテルで泊まっている」と答える選択肢はノーだ。もっと別の返答を出さなければならない。
ならば、「友達の人の家に泊まっていた」ならどうだろうか。これならその友達とは誰かを聞かれても、他人の個人情報を公開するわけにはいかないという理由で乗り切れる。
(……これだ)
「……友達の家に泊まってたんだ」
「へぇ? 神奈川派閥に来てまだ日が浅いあなたに友達なんているのかしら?」
「気の合う友達ができたんだよ。その子の家に入れてもらってたんだ……ちなみにその友達の名前はしゃべらないぞ。他人の個人情報だからな。俺がどうこうできる問題じゃない」
他人の個人情報を公開できないと事前に喋っておき、予防線を張っておく。これで無理矢理情報を公開しようとしても、事前に行ったこの言葉を連呼して押しきることができる。
(人間てのは意外に押しに弱いんだよ……)
そう考えていると、黒のクイーンは俺の返答に対してさらに疑問をぶつけた。
「……なぜ、自室登録をしないの?」
問題はこの質問だ。この質問は俺と黒のクイーンの間で繰り広げられる問答の中で1番返答が難しい質問だ。が、逆に言えば、ここを切り抜けるとグッと楽になるのだ。
そして……これに対する回答を、俺は思いついていた。
「そりゃもちろん……あの王馬と戦って勝ってしまったからだよ」
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