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対談 その1

 ようやく……ようやく対談パート……だと?

「さ、そこに座って……後、今は敬語を使わなくてもいいわ。お互いに腹を割って話し合いたいもの」


「……わかった」


 俺は敬語を崩し、黒のクイーンと机を挟んで向かい合っている1人用ソファに腰掛ける。少し気になって黒のクイーンの座っているソファもチェックしたが、どうやら俺と全く同じもののようだった。


「さて……待っていたわよ。この時を」


 その瞬間、さっきまでの柔らかい雰囲気が一転。黒のクイーンの雰囲気が、俺を威圧ながらも品定めするような雰囲気に変わった。


(本気モードってやつか)


 それに呼応し、俺も真剣モードに突入。気持ちを入れ直す。


 この対談は俺にとって、神奈川派閥での生活を磐石のものにするためにはとてつもなく重要な対談だ。少しでも怪しい部分を見せてしまえば、黒のクイーンの鶴の一声で神奈川派閥から追放されてしまうかもしれない。


 追放はされなくとも、何か監視役を設けられるかもしれない。そうなると袖女との話し合いもできなくなる。訓練の内容を報告されて、神奈川派閥が俺の手の中にないタイミングで強化されてしまう可能性だってある。とにかく、ここはなんとしてもノーダメージで帰りたい場面なのだ。


「まず……あなたはどこから来たの?」


「……プロフィールに記載したはずだが?」


「出身地じゃないわ。出身校や親族を知りたいの」


(かなり踏み込んでくるな……)


 俺は店主のスキル『対価の代償』により、どんなに俺に関しての情報を探られたとしても、それが黒ジャケットに結びつくことは絶対にない。


 ……だが、それには条件と上限がある。


 まず、条件は俺が一度でも神奈川派閥の外に出た場合、『対価の代償』の効力が消えること。


 なのでもし、俺に遠出するような任務が与えられると、その効力は消え失せてしまう。


 次に上限だが、店主が『対価の代償』を使った時、神奈川派閥の敷地内にいない人物と、既に俺を知っている人物には効力が適用されない点だ。


 袖女が俺の存在を覚えていたことがいい例だろう。


 しかし、クイーンやキングのような派閥にとって重要な役職をもつ存在はめったに派閥内から外に出ない。よって、黒のクイーンに個人情報を話すのは問題ないのだが、問題はその後だ。


(黒のクイーン以外のチェス隊が『対価の代償』発動時、神奈川派閥内にいたとは限らない……!)


 例えば今、部屋の外にいる黒のルーク。もしかしたら大阪派閥にいた袖女のように、遠出が必要な任務が与えられていてもおかしくはない。


 よって、名前や出身地まではよしとしても、神奈川派閥外に出た時に、すぐさま俺イコール黒ジャケットだと結びつくような発言をするわけにはいかないのだ。


「……黙秘権を使う」


「神奈川派閥にいられなくなっても?」


 その言葉を聞いた瞬間、俺はこの対談の真実に気づく。


 これは対談ではない。1種の脅迫だ。


(……感づかれてるか?)


 なら尚のこと話すわけにはいかない。


 俺はズボンのポケットに手を入れ、前々から用意していたボイスレコーダーの()()を取り出す。


「……このボイスレコーダーに録音された音を流せばどうなるか……あんたなら理解できるだろ?」


「ほう……考えたわね」


 もちろん、このボイスレコーダーは模型であるため、録音機能などついてはいない。これはハッタリだ。


「……それ、本物かどうか確認させてもらってもいいかしら?」


「相手にこれを渡すとでも?」


(さて、ばれるかどうか……)


 俺の話術の見せ所だ。

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