コーヒーがうまい
仕上がってるよーん。次は夜に!
そこから数分、俺たちは何事もなく運ばれてきたコーヒーをすすり、久々のまったりした時間に体をゆだねていた。
「あー……」
「んあー……」
「ワウ〜……」
まず先に俺が惰性で声を出し、それに共鳴するように袖女とブラックも続く。普通なら注意されるところだが、今は俺たち以外に誰もいないため、マスターも目をつぶってくれていた。
(あれ、そういえば……)
「今日はおじいさんたちいないんですか?」
おじいさんたちとは、言わずもがな毎日のように喫茶店に来ていた白髪のおじいさんと黒髪のおじいさんだ。
片方は白のキングだと発覚したが、喫茶店の中でだけはそれ相応のおじいさん2人にしか見えない。そんな2人の憩の場に、肝心の2人がいないのは少し妙だ。
「さぁ……あのお2方は毎日のように来てくださるんですがね……」
「決まってこない日とかあったりするんですか?」
「んー……定期的に来ないというよりは、急に来ない日が存在する感じですね。だから私もいらっしゃるのかいらっしゃらないのかいつもそわそわしておりまして……今日は寂しい思いをしていたのですが、お客様方が来てくれたおかげで今日は乗り切れそうです」
「いやそんな大げさな……」
なぜかマスターに感謝された。
……しかし、白髪の方のおじいさんは白のキングだ。そして白のキングはこの喫茶店をとても気に入っている。そんな人が喫茶店にくるのを止めるほどの事情が何かあったということ。
(……一体なにを)
「ちょっと! おーい!」
おじいさんが今何をやっているのか気になりだしたタイミングで、袖女が俺の方をつつき、声をかけてくる。
「ん?」
「今、何か考えごとしようとしたでしょ」
「あ、まぁ……」
「そういうのナシにしましょう。せっかく休めてるんですから、休める時にはしっかり休まないと……」
そのタイミングで袖女はコーヒーを口に含み、一言を述べた。
「……大事な時に力が出せないですよ?」
「……そうだな」
確かに袖女の言う通り、休める時にきっちり休まないと、中途半端な状態で毎日を過ごすことになってしまう。俺の目標の関係上、その毎日には戦闘も含まれている。戦闘を十分な状態で行わないということの危険性は、文化祭の時に嫌と言うほど体験した。
今は体を休め、いざと言う時のために力を溜めるべきだ。
「……今後の方針を話し合おうと思ったけど、また今度にするか」
「ええ、それが1番ですよ」
その言葉を最後に、俺は再び惰性タイムへと突入した。