何がどうなってこうなってる?
0時過ぎにまた投稿します
あの後、別に何かが起こることもなく、袖女の部屋へ戻るため、神奈川本部へ入り、足を進めていた。
……が、何事もなかった帰り道は神奈川本部に入って一変する。
「あの人が……」
「そうそう、例の……」
(……あぁ? なんだ?)
周りの視線がいやに痛い。俺をじっとにらみつけたり、こちらを見ながら集団でひそひそ話をしたりと明らかに変だ。
俺が普段、訓練所へ向かうために神奈川本部を歩く時も、ある程度は注目を集めたりしたが、訓練する時間帯が朝と夜という昼と比べて人が少ない時間帯ということと、俺が気になって集まってくる女たちを袖女が代わりにさばいてくれていたおかげで、あまり気にならなかったのだが、今日はいつにも増して周りからの視線を感じる。
(……話しかけてみるか)
俺1人ではどうしようもない。まずは誰か1人に話を聞いて、なぜこうなっているのか聞き出さなければ。
「あのー……ちょっと」
「えっ、いや、ごめんなさい!」
話しかけた瞬間、女は顔を真っ赤に染め、両手で顔を隠して走り去ってしまった。足を踏み込むたびに揺れる尻が何ともいえない。
「……はっ!? しまった……」
思わず尻に目が吸い込まれてしまった。いけないいけない。そんなことをしている暇は無いのだ。
「ワウ?」
「ああ、ブラック……なんでもないよ」
ほらみろ。今の今まで何もしゃべらずついてきて、ほとんど空気だったブラックにすら注意されてしまった。
犬に注意されるとは何たる醜態。ここは心を入れ替え、真摯な心で再びチャレンジしなくては。
(よし、次はあそこにいる女に……)
「ちょっとすいません。少しお話を……」
「ああっ! ちょっ、そんなぁ〜!!」
次に意を決して話しかけた女は、前の女と同じく、顔を真っ赤に染め、体を左右に大きく振りながら走り去っていく。
体を振ることによって揺れる大きな胸が何ともすばらしい。
「……うん。しょうがないじゃないか。男なんだもの」
「ワウ!」
勘違いしてもらっては困るので言っておくが、俺だってまだ17歳。普通に生活していればまだまだ高校生。性には活発なお年頃なのだ。そんなお年頃の人間が、自分の視界内で揺れる尻や胸に視線が行かないわけがない。
(これはしょうがないことなのだ……これは指定するよりも受け入れるべき、大人の一歩……)
これは後退ではない。受け入れるべき歩なのだ。そう思いを胸に秘め、袖女の部屋がある階へのエレベーターに乗り込み、独特の浮遊感に襲われる。
その感覚に浸る暇もなく、エレベーターの人工音とともに、数秒で目的の階へたどり着き、ゆっくりとそのドアが開く。
「……ワウ? ワン! ワン!」
「ん? どうしたブラック、部屋にはもうすぐたどり着く……なんだあれ」
その階にあったのは、他の階とは比べ物にならないほどの人だかり。俺が初めて訓練所で戦った時にも、観客スペースにとてつもない人だかりがあったものだが、これはその量に匹敵するのではないだろうか。
とにかく、それくらいの人混みが目の前に広がっていた。思わず酔いそうになってしまうほどの。
「なんだこれ……」
そう俺がつぶやくと、その声が聞こえたのか、一気にたくさんの人がこちらを振り向き……
「いっ……!!?」
女性特有の甲高い声が、そこら中に響き渡った。
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