久しぶりのこの感覚
「ハァ……はぁ……」
「さて……今日はここまでかのう」
あの後も戦いは続き、最後には体力切れで俺が倒れるという結果に終わった。
「くそ……こんな……」
おじいさんに対して、黒剣を投げるなり、小石をつかんで投げつけてみたりいろいろ試したのだが、結局直前で瞬間移動され、体の節々に見えない攻撃をヒットされてしまった。
一体、おじいさんのスキルは何なんだ。単純な瞬間移動なら、相手の視界から外れた不意打ちで難なく突破できるが、おじいさんの場合、不意打ちしたとしても、相手の視界から明らかに外れていても、こちらの攻撃に気づいていなくても瞬間移動を使われてしまった。
それにあの見えない攻撃。至近距離でないと攻撃できないは明らかだが、それにしてもガードできなさすぎる。特定の場所に衝撃を発生させるスキルなのだろうか?
(でもそれだと、あの瞬間移動の説明がつかない)
デュアルは判明しているものだけでいうなら桃鈴才華しかいない。相手は白のキングだ。もし白のキングがデュアルなら、今頃日本中に伝わっているはずなので、それもない。
「……くそぉ」
「まぁそう悔しがるでない。初っ端の剣での攻撃には驚かされたぞい。実際に気づけんかったからな」
慰めをかけられても、俺の心は晴れやかにはならない。なぜ勝てなかったのか、なぜ攻撃が当たらないのか、それができない自分に対する悔しさが体中に巡り巡ってくる。
(……へへ)
しかし、それと同時に感じる強くなっている感覚。自分の手数の引き出しが増えていく心地良い感じ。
俺が求めていたのはこれだ。悔しさの中に感じる強くなっていく感覚。体の奥底から膨れ上がっていく自信、悔しさと自信。この矛盾した感情が、喧嘩することなく体の中で調和していく。
(久しぶりだ……これを待ってたんだ……!)
ニヤつきが止まらない。この感覚が大好きで……
「2時間もぶっ続けで戦っておったんじゃ、そうなるのも当然。今日はここまでにしておこうか。老体には少しこたえたわい」
「ああ……わかった」
おじいさんから水を受け取り、訓練所を去っていくおじいさんを見つめる。
「まだまだだな……」
俺はまだ強くなれる。そう確信しつつ、自分が目指しているものの果てしなさを再確認した。
強く……! なっている……!