袖女強化訓練 厳しめバージョン
次話もよろしく!
袖女の舐めた態度にイラつきを覚えた俺は、未だに寝巻きだった袖女を無理矢理着替えさせ、訓練所に向かった。
そして今、こうして訓練所で訓練を始めようとしているところだった。
「あの〜……」
「今日の訓練はそこまで時間を取ることができない。よって、少し厳しめにメニューを組み直すことにした」
「えっと……」
「オーラをほとんど使い切るのは変わらないんだが……今回は体全体にめぐらせるのではなく、あくまで体からオーラを抜くために、わざとオーラを外に放出してくれ」
オーラを体中にめぐらせるのが可能になった時の恩恵は確かに計り知れない。だが、プロモーション戦までの少ない時間で習得できるとは限らない。よって、確実に成長できるオーラが少なくなった後の動きを磨くことで、少ない時間で最大限の成長を得る作戦だ。
「さ、始めるぞ」
「……ねぇ!」
急に袖女が声を大にして声をかけてきた。
(袖女の『ねぇ!』なんて言葉初めて聞くなぁ)
「どした?」
「どうしたもこうしたもありませんよ! イタズラしたのは申し訳なかったですけど……いい加減に機嫌直してくださいよぅ……」
袖女の声はいつにも増して弱々しい。俺の体表からふつふつと湧き出る怒りのオーラを感じ取っているのだろう。
「……別に怒ってないが」
「いや絶対怒ってるじゃないですか!」
「……はぁ」
はっきり言って、今回の怒りは俺に対して向けられたものだ。大阪派閥の頃と比べれば、そこまで戦っていないにも関わらず、いっちょ前に疲れて眠ってしまった自分自身への……
(……俺が意地を張ってるだけ)
俺が未熟だから起きた出来事に、袖女が責任を感じる必要はない。
「……安心しろ。お前に怒ってるわけじゃない。未熟な自分に怒ってるんだ。袖女になんの落ち度もないぞ」
「……ほんとですか?」
袖女は腰をかがめ、俗に言う上目遣いというやつで俺を見つめる。もし見ている人間が何も知らない昔の俺だったら悩殺されているところだった。間違いなく。
「……ああ。変な気を使わせて悪かった」
そう言いながら、かがんで低くなった袖女の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。東一を出てから一番付き合いが長いことも相まってか、最近袖女の扱いが女というよりペットになってきた。
「さて、とっとと始めるぞ」
「ん……あ、はい!」
時間はない。さっさと訓練を始めよう。