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少し前、袖女視点

「んう……」


 まぶたを貫通する光に目を射抜かれ、私は睡眠状態から覚醒状態へと至る。脳はまだ少し寝ぼけているのか、物事をうまく考えられず、上半身だけ体を起こしても、自分を眠りへと誘うかのような心地よい浮遊感が体を支配していた。


 ここまで聞くといつも通りだが、いつもよりも眠りへ誘う浮遊感が強い気がする。間違いなく昨日の影響だ。


 実は昨日、彼と黒のクイーンの話し合いが決定してしまった反動で興奮してしまい、いつにもまして寝付きが悪かったのだ。


(ぐっ……)


 思わず、せっかく起こした体をもう一度柔らかいベッドに沈みこませそうになるが、私だってこの誘惑と毎日戦っているのだ。対処法は理解している。


(だめ……!)


 私は無理矢理掛け布団を体からはがし、その両足でしっかりと大地を踏みしめ、二速歩行の体を無理矢理持ち上げる。今度は上半身だけではなく、下半身も一緒に体を完璧に持ち上げた完全な起床。


 ここまで来ることができれば、私の脳内を侵食しようとしていた誘惑の悪魔も鳴りを潜め、一瞬で浄化されていく。おかげで脳は完全覚醒、浅間ひより真面目モードの爆誕だ。


「時間は……!?」


 そしていつも通り、時間を確認しようとスマホを確認した瞬間、いつも通りの日常の中で、たった1つ日常ではない部分を見つけてしまう。


 それは起床時間だ。その時刻、なんと午前10時。いつもなら着替えを済ませ朝ごはんを作り、彼に食べさせて一緒に訓練へ向かっている時間帯。


「やっ……ば……!!」


 ただでさえ昨日のミスがあるのに、それに加えて寝坊してしまうのは彼に申し訳が立たない。


 彼がお腹を空かせて待っている。それを考えただけで申し訳なさが止まらない。昨日の事は許してくれたとはいえ、この寝室のドアを開けた奥にいる彼からの叱責は免れないだろう。だからこそこれ以上怒らせないように、1秒でも早く着替えて彼に謝るべきだ。


(よし!!)


 そうこうしているうちに私の体はパジャマから部屋着にジョブチェンジを完了させ、寝癖の治っていない髪も気にせずダッシュで寝室のドアをこじ開けた。


「昨日のことに引き続き寝坊してしまってすみません!」


 言葉だけ聞くと、遅刻した部下が上司に謝る時の決めゼリフのようにしか聞こえないが、これは正真正銘、彼に対する私の言葉だ。

 

 おそらくきっと、彼が怒りに顔を歪ませ、仁王立ちしながら立っている。そう思っていたのだが……


「ぐぅー……んふぅー……」


「え……ん……?」


 そこにあったのは、ソファの上で気持ちよさそうに眠る彼の姿だった。



 

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