次の日、対談へ その2
またいつも通り、次は深夜1時過ぎです〜
「は……はわわ……わ」
「…………」
朝、寝起きの俺は、イタズラを仕掛けてきた袖女に先制イタズラとして、ゼロ距離でのおはようコールをぶちかましていた。
そのかいも相まってか、袖女の顔を見たことがないほど真っ赤っ赤の赤。俺の先制イタズラは大成功したと言える。
(時間は…….)
「あう、あ、ううう……」
袖女と顔をゼロ距離で近づけたまま、チラリと目だけを動かし、時計の針をチェックする。ちなみに袖女は顔真っ赤にしながらあうあう言ってるだけだ。予想外の出来事に対応しきれないのは、袖女の弱点と言えるかもしれない。
(予想外の出来事に対処するための訓練も、メニューに追加するか……?)
そう思いながらも、目線に時計の針を捉え、時間をチェックする。その時計の針は『11』の文字を刺していた。
(なるほど、午前11時か……)
袖女の情報によると、黒のクイーンとの話し合いは夜、黒のクイーンの仕事が終わったタイミングから始まるらしい。時間が決まっていない以上、袖女との夜間練習が削られてしまう可能性がある。昼は白のキングとの訓練があるので、袖女と訓練できるのは朝のみ。もう1時間しかない。
(なんでもっと早くに……)
もっと早く、いつも通り袖女が俺を起こしていれば、もっと余裕を持って訓練できたはずだ。そしてそれは俺だけでなく、袖女にとってもプラス。なのにこんなギリギリまで――――
(……あ。違う)
その時、俺の中の何かが注意報を鳴らす。それは違う、それは嘘だと……
(こいつは……俺を優先したんだ)
今日、俺は神奈川派閥に居続けることができるかできないかの瀬戸際に立つことになる。
そんな俺を心配して、せめて心行くまで眠らせてあげようとしたんだ。
予想ではない、確信。
その時、全身を駆け巡る強烈な不快感。お前はせいぜいその程度だと、黒のクイーンには敵わないんだと言われているような気がした。
「チッ……」
『舐めるな』
舌打ちをした後、袖女を押し除け、"とある場所"へ向かうために歩を進める。
「行くぞ袖女――――」
「訓練の時間だ」