部屋への入り方
いつも通り、深夜1時過ぎにもっかい出します!
その後、いつも通り袖女との訓練を終えた俺たちは、部屋に戻って風呂で汗にまみれた体を洗い流し、一息ついていた。
「……あー……」
さすがの俺とはいえ、今日はいろんなことが立て続けに起こったのでかなり疲れてしまい、ソファに体を預けていた。
いつも通りの袖女との訓練に、白のキングとの邂逅と戦闘、帰ってみたら黒のクイーンと明日対談をすることが決定していた。肉体的にも精神的にも、久々に悲鳴をあげていた。
前々から袖女に話そうと思っていて、今日話そうと考えていたことはあるが、今日はやめにして体を休め――――
(……いや、だからこそ言うべきか)
俺が言おうと思っていることは、そこまで優先順位が高いものではない。明日は黒のクイーンとの対談があることだし、今言うことで、明日何もせず疲れをしっかり取るのが最適解だ。
「……あのさー」
「なんですかー」
俺と同様に、袖女もだいぶ疲れているのか、俺と同じく、隣でソファに体を預けていた。
「……話したいことがあってさー」
「……それって大事なやつですか?」
「いや別に」
「このまま聞いてもいいやつですか?」
「おう」
「そうですか」
袖女はその話を経て、一度は起き上げた体を再びソファに沈み込ませる。目を細め、緩みきっているその顔はどこか幸せそうで、なかなか見れない袖女のその顔に少し得した気分になる。
(おっと、違う違う……)
緩みきった空気感に思わずまぶたが重くなったが、何とかそれを堪え、口を動かして言葉を発する。
「……俺っていつも窓から部屋に入ってるだろ?」
「ええ」
「だけど、それだといつかばれた時、なかなか面倒臭いことになるだろ?」
「ええ」
「だからさ――――」
「ドアから堂々と部屋に入っていいか?」
「えぇ……」
俺が案を提示し、袖女が返事をしようとした瞬間、袖女のまぶたがついに完全に下がりきった。
「……別にいいか」
その返事は了承だったか断りの返事だったかは定かではないが、返事をしたのは事実。寝てしまったのは袖女の落ち度なので、ここは了承の返事だととらせてもらおう。
「うし、やることもやったし……寝るか」
そうなると、このソファから袖女をどける必要があるため、眠っている袖女を起こさないようにゆっくりと持ち上げ、安定感を保つためにお姫様だっこで寝室に運ぶ。
なぜお姫様抱っこかというと、普通のおんぶなどでは滑り落ちてしまう危険性を考慮してだ。決して一度は女に対してやってみたかったからとかそんなものではない。断じてない。
俺はそのまま袖女をベッドに運び、ソファで眠りについた。