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ん……?

「は……? 何を……」


「とぼけないでちょうだい。最近、あなたと訓練所に入り浸っている田中伸太と私を引き合わせてほしいのよ。できるだけ早くね」


 斉藤さんは頼んだことの内容について私が疑問に思っているように感じたらしく、先ほど話したことと全く同じことを言葉に乗せて発するが、当の私はもっと別のことについて疑問に思っていた。


(田中……伸太……?)


 田中伸太? 田中伸太だと……? 誰だその人は。


 斉藤さんの話を聞く限りだと、彼のことで間違いなさそうだが……田中伸太?


(……ん? そういえば……)


 彼のランキングを確認するため、唯一私が知っていた彼の苗字である『田中』を頼りに男性ランキングリストをチェックした時、第3位に『田中伸太』とあったような……


 彼の名前……『田中伸太』って言うんだ……


(そっか……そっか……)


 彼の名前を知れたことに妙な満足感を得られた私は、斉藤さんの頼み事をいまさら理解した。



 つまり、私は彼と斉藤さんを引き合わせればいいわけだ。



 彼と斉藤さんを……



(……え?)



 私の耳が腐ってしまったのだろうか、斉藤さんが発した言葉は、要するに私に彼と斉藤さんの距離を縮める役をやれということだ。


「……でしょうか」


「……? どうしたの?」


「……なぜでしょうか」


 黒のクイーンである斉藤さんがなぜ彼に近づこうとするのか。考えられる理由は主に2つ。


 1つは彼が黒ジャケットだとばれた可能性だ。彼の異常な強さは、ひと目見た人ならば黒ジャケットを彷仏とさせる人もいるだろう。彼によると、グリードウーマンとの戦いの一部を斉藤さんに見られたらしいので全然あり得る可能性だ。


 そしてもう1つは……斉藤さん自身が彼に興味を持ってしまった可能性。


 事実として神奈川派閥には、現時点で強い男性兵士がいない。もちろん黒のキングと白のキングが存在してはいるが、もう完全におじいちゃんの年齢だ。それに、今神奈川派閥に求められているのは、若くて強い男性兵士。そう考えると、あの2人は斉藤さんの興味からは外れるだろう。


 と、なると、斉藤さんが1番に興味を引くのは……


(ぐ……むむ)


 私は無意識に歯噛みながら斉藤さんを見つめる。


 斉藤さんは贔屓目で見なくても相当……いやバチバチの美人だ。よく手入れされた黒髪に見ていると吸い込まれそうな瞳。モデル体型のそのプロポーションも美しいの一言。それに地位も高く、完全無欠である。


 故に、彼と斉藤さんを引き合わせた時、彼が興味を持ってしまう可能性も……


「ぐぐ……ぐぐぐ……」


「え、ええっと……?」


 私の異変を感じとったのか、いつもの優雅で余裕な雰囲気を崩し、オタオタとたどたどしくなっていた。


(あ……)


「す、すみません! つい……」


「いえいえ! いいのよ。こちらが何も伝えずに来ちゃったわけだから。いきなりこんなことを言われれば混乱してしまうのも当然だわ」


 斉藤さんのフォローを受けつつ、何とか冷静さを取り戻した私は、少し考えた後、この斉藤さんのお願いに対してどういう答えをするのかを頭の中で決定させ、言葉に乗せて放った。


「そのお願い……微力ながら引き受けさせて貰います」



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