黒のクイーンたるもの
強さには2つの種類がある。
1つは身体的な強さ。圧倒的スピードに超パワー。この2つの中では1番一般的な強さだ。
2つ目が異質的な強さ。スキルによるチートじみた力であったり、人間の身体能力のみでは到達し得ない異次元な強さがこれに分類される。
今、黒のクイーンが放っている強さは、まず間違いなく後者の異質的な強さに分類されるのだろう。
(しかしこれは……あまりにも……)
凄まじい強さとか、異次元な強さとか、そんなものじゃない。異質的な強さの中のさらにそのまた異質。その強さの中でも最上位に位置するものだろう。
「な……!? あ、がらな……」
そう思った理由は簡単。黒のクイーンの近くの地べたで、土下座するようにうずくまるシュルカーの姿があったからだ。
(シュルカーの動揺を見るに、黒のクイーンのせいでああなっているのはわかるが……)
シュルカーは戦いを挑もうとしていた。
あの不意打ちもおそらくはダメ元。あの不意打ちがもし不発に終わったとしても、もう一度貝殻の中に戻り、当たるまでそれを繰り返したことだろう。
……これがもし戦いであれば。
これは戦いになっていない。ただ相手は女王に対してこうべを垂れるだけ。
戦いの舞台にすら立たせてもらえない理不尽な強さ。その強さの上に、戦いとは180度違う穏やかな光景が、俺の目の中に写っていた。
「……ねぇ、あなた?」
「っ……!!」
言葉を投げ掛けられたシュルカーの肩が、陸上に上がった魚のようにビクリと跳ねる。
「戦おうなんて……抵抗しようなんて思わないでね?」
そう言うと、女王はシュルカーの肩にポンと手を置き……
「私は上で……あなたは下なんだから」
瞬間、シュルカーの体からブチブチと肉が千切れる音が聞こえる。そしてそれに続くように、ボキリボキリと骨が折れるような音が響く。
やがてそれは地面にも伝搬し、ひざまずくシュルカーを中心に地面が大きく沈みこみ、クレーターが発生。シュルカーは事切れたらしく、そのまま地面に頭をつけて動かなくなった。
「……ふぅ、終わったわね」
すると、女王はこちらにくるりと頭を向けてくる。
「少しお話ししない?」
その口から放たれたのは、会話へのお誘いだった。
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