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グリードウーマンの世の中

 あの後、一体誰が正しかったのか、私は考えるようになった。


 アヒルの親子を見ず、殺し続けていた人々が悪いのか、はたまた人ごみの中に入ってしまったアヒルの親子が悪いのか。


 ……それとも、最後のとどめを刺した自分の両親が悪いのか。


 命は平等だと思っていたが、あの光景を見るとそれは嘘だとわかってしまう。よく考えてみれば、日常的に殺しているハエや蚊、食用として口にしている牛や豚も、命が平等だとしたら、人間なんて全員大罪人だ。死んだ後に天国なんて行けるわけない。


 しかし、誰も悪くないのなら、私がこんな気持ちになるわけがない。私をこんな気持ちにさせた原因が、あの場で唯一悪かったものがあるはずなのだ。


 そうして私は考えに考え続けた。ついには学校も休み、自分の部屋に閉じこもって考え続けた。別にいじめられていたわけでもない。貧困的な生活を送っているわけでもない。ただの小さな女の子が、悪いものについて考える。


 小学生になりたての女の子が、ここまで深い世の中の心理のようなことについて考える。今思うと、それがどれだけ異常な行動だったかが理解できる。



 ……そして、ある日気がついたのだ。



 きっかけはまだスキルが発現したてで、まだ戦争が始まっていない時代、1人の作家の手によって書かれた小説だった。


 それにはこう書かれていた。


『人が人ならざる力を手に入れた時、人は己の責任を忘れ、欲望にひた走る』


 この言葉が、私の人生を大きく変えてくれた。


 一見、よくある人間の欲望の深さを書いた言葉のようにしか見えない。実際、これを書いた作者もその程度の浅い考えで書いたのだろう。


 だが、私の心には別の違った意味をもたらしてくれた。


(……スキルがあるからだ)


 そう。スキルなんて言うものがあるせいで、人間は変わってしまった。本来、思いやりと支え合いで生き抜いてきた人間という種族が、スキルと言う超常的な力に溺れ、姿は変わらずとも、思いやりと支え合いが心の中から消滅し、別の種族へと形を変えてしまったのだ。


 人間という生態系の頂点としての責任である多種族の保護も忘れ、力に溺れた全く別の種族に。


 あの時、真に悪かったのは両親でもアヒルの親子でも、ましてや周りの人混みですらない。スキルと言う名の癌だったのだ。





 ……取り戻さなくてはいけない。





(人間という種族を……取り戻さなくては!!)





 そのために、グリードウーマンになったのだ。いつか世界を救うため。人類をスキルの呪縛から救うため。





「だから……」





 そう、だから。





「負けられないんだよォ!!!!」





 世界を……救済するために。








 

 


 


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