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グリードウーマンの世界

 グリードウーマンの過去

 戦いとは、数が全てだ。


 人数が多ければその分優位に戦えるし、攻撃手段も増える。


 スポーツだってそうだ。サッカーで人数が11人よりも20人いた方が強い。テニスだってシングルスよりダブルスの方が圧倒的に有利。


 人が定めた絶対基準。それは覆る事はなく、今までの人の歴史からも、その基準は破られることなく、その世界に存在し続けた。


 ……しかし、それは人が人でいた時の話だ。


 人が人の力を持っている場合のみ、その絶対基準は通用する。なら、人が人ならざる力を持ってしまった時、どうなってしまうのか。


 答えは簡単、その絶対基準を破壊し、数の多い少ないによる有利不利がなくなり、個の力だけで何もかもを超えることができる。


(……私がそうだったようにね)


 グリードウーマン……そう呼ばれていなかった頃、私は1人の小さな女の子として人生を謳歌していた。


 家が特別裕福と言うわけではない。ただ、両親の愛情を一身に受け、心優しい少女に育っていたと言う自覚はある。あのままいけば、間違いなく神奈川派閥に全てを捧げる兵士として、人生を使っていたことだろう。



 あの出来事さえなければ。



 私が小学校に入りたてだった頃、小学校の入学祝いに近くのテーマパークに連れて行ってもらった。


 久しぶりのテーマパークに興奮し、はしゃいでしまった私は、気づけば両親とはぐれてしまっていた。私はそれに気づき、探しても探しても見つからない両親を求め、ついに泣き出しそうになる。


 しかし、涙腺から溢れそうになったその涙は、目頭を通り、頬に到達することはなかった。


「あ……アヒルさん……」


 後ろにたくさんのひよこたちを連れ、人混みの中を急いで抜けていく。


 アヒルの親子は人混みのせいでなかなか進むことができず、とても困っている様子だった。


 なのにもかかわらず、人たちはアヒルの親子を気にすることなく、通り過ぎるまで待ってあげようとする人は1人もいない。そもそも、片手に握ったスマホにばかり目がいっているらしく、アヒルの親子の存在すら認識できていないようだった。


「アヒルさん……アヒルさんがぁ……」


 人混みに紛れ、ドンドン歩く場所が減っていく。そしてついに――――


 ついに、ひよこが1匹踏みつぶされた。


「あっ……」


 その負の連鎖はとどまるところを知らず、次々にひよこたちが1匹、また1匹と踏みつぶされた後の残骸を残し、数を減らしていく。あの頃の私はそれを、ただ眺めていることしかできなかった。


「ああっ……あっあっあっ」


 私はすごく悲しかった。小学生なりに感じてしまった。人間はここまで愚かなのかと、なんて悲しい生き物なんだと。


 これからは用心深く相手を観察し、信用に値する人物か判断してから友人関係を作っていこう。そう思った。



 そこまでなら……



 そこまでならよかったのに。





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