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壁がある者、ない者

「んー……」


 袖女の部屋から出た後、喫茶店には寄らず、民間の訓練所に直行し訓練をしていた。


 もう俺も神奈川兵士として認められているんだし、施設の訓練所にも行ける。ただ、今日はあの白のビショップをぶっ飛ばした日から二日間しか経過していない。訓練中、王馬に心酔しためんどくさい奴に絡まれると面倒臭い。


 よって、多少設備に違いがあっても、民間の訓練所の方が訓練しやすいというわけだ。


「ワッ! フッ! フシッ!」


 ちなみに、我が愛犬ブラックも少し離れたところで尻尾の刃を振り回している。向上心が強いようで何よりだ。


「それにしても……」


 神奈川に入ってから、強くなっている感覚がしない。エリアマインドの力の一端を手にし、攻撃のバリエーションは増えたが、自力が上がっている感じがしない。もっと体を強くしたいのに。


(なんで……いや、原因はわかってる)


 今回と今までの違い。それは好敵手の存在だ。


 今までの俺の道筋には、必ずと言っていいほど強大な敵が立ちふさがってきた。


 東京派閥のレベルダウン、袖女、十二支獣、騎道兄弟に桃鈴才華。


 その時の自分では、いくらがんばっても勝てないんじゃないか。そう思わせられる敵がわんさか出てきた。


 しかし、今回の神奈川派閥にはそれがない。戦う相手がいない。


「ふっ……」


 皮肉なものだ。前はあんなに復讐を邪魔しないでくれと思っていたのに――――


 ――――今はそれを求めてる。









 ――――









「うーん、うーん……」


 私は彼を見送った後、すぐさま部屋を出て、施設の訓練所に入り浸っていた。


 彼に渡された文字、『手のひらで回転させて撃ち出せ』それがずっとイメージできず、私は頭を悩ませていた。


(回転させるのは何とかできた……後はそれを発射させるんだけど……)


「あっ……また」


 回転させて発射したオーラは私が拳を突き出した方向とは全く別の方向に飛んでいってしまった。


 そう。この動作の中で1番難儀なのが回転させたオーラの発射方法。いつものオーラなら、こうやって拳を突き出すだけで発射できた。


 だが、回転してオーラを発射することで、今まで直線的な動きしかしなかったオーラに変則的な動きが伝わり、その影響で野球の変化球のようにオーラがグニャリと曲がってしまう。思った方向に飛んでいってくれないのだ。


「おーい! ひよりー!」


 聞き覚えのある声が耳に入り、その方向に頭を動かすと、そこには天子先輩ともう1人、珍しい人物がいた。


「……日菜?」


「やってるんだなー! いい調子だなー!」


 そこにいたのは白のルーク、奥山おくやま日菜ひな。私の同期であり、私にとっては数少ない友の1人。階級だけで言えば天子先輩よりも上の超実力派兵士だ。


 背は女性としてはかなり高い173センチで、見た目は赤髪のショートカット。いつも語尾に「だなー」をつけている。


「日菜! 同盟会議ぶりですね!」


 私は訓練所を出て2人の下へと近づく。


「久しぶりだなー! 帰ってきたんだなー!」


「山梨への遠征は終わったんですね!」


「だなー! 戻ってきたのだなー!」


 日菜は長い間、山梨派閥へ遠征に行っていたのだ。なので、それから出会えたのは、彼にウルトロンを奪われたあの会議の時のみで、あの時は状況が状況だったので、再会の喜びを分かち合うことができなかった。


「元気そうで何よりです!」


「ひよりも元気そうなんだなー……でも、さっきはなんだか思い悩んでいたんだなー、どうかしたかー?」


「あ……そ、それは……」


 さすがに昔からの付き合いなだけあって、長い間あっていなくとも、私の考えていることはわかるらしい。


「あたしとひよりの仲なんだなー! 悩んでいるなら力になるんだー!」


「……あ」


(そうだ……私にはいるじゃないか)


 私には、こんなに近くに高い壁があるじゃないか。


 訓練中に黒のビショップと白のルークが来てくれる。強さを求める者にとって、ここまで羨ましがられる状況はない。これを活かさずしてどうする。


「……では、訓練の相手をお願いできますか」


 試すんだ。目の前にある大きな壁(白のルーク)に。


 


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