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ランキング更新

 もう少しの日常

「あ……そういえばこれ」


 袖女の作った懐かしの朝ご飯を食べていると、袖女がタブレットを開き、画面を俺に見せてくる。


 その画面は神奈川ランキングを表示している画面で、そのランキングの第3位に『田中伸太』と書かれていた。


「……おぉー、だいぶ上がったな」


「ほんとですよ。普通こんなのありえませんからねー」


 俺はもともと、3位からが本番だと思っていたので、そこまで驚きはしなかったが、袖女が声を上げて驚かないのは驚きだ。もっと盛大な反応をすると思った。


「驚かないんだな」


「あなたならこれくらい楽勝でしょう? むしろこれからが勝負だとか思ってるんじゃないですか? あれだけランキングがどうのこうのって言ってたし」


 強さに関して言えば、俺は袖女からなかなかの信頼を寄せられているらしい。しかも、俺の考えていたことすら予測してみせた。さすがに長い付き合いではない。


「ちぇ、お前の驚く顔が見れるかと思ったんだけどな」


「ふふーん。まだまだ甘いですよ。そうですね……1位になったら驚いてあげます」


「チェス隊の中ではドベのお前が言うねぇ」


「表出ろぶっ殺してやる」


 そんな世間話をしていると、気がつけば朝ご飯が皿だけを残してきれいになくなってしまった。こうなれば、俺がここにいる意味はない。


「ごちそうさま、そろそろ行くわ。おいブラック、とっとと行くぞ」


「ワウ?」


 ブラックもちょうどドッグフードを完食したらしく、空になったフードボウルをペロペロと舐めているところだった。


「ワウ!」


 少し待ってやるかと思ったが、俺の呼び声を聞くと、フードボウルを舐めるのを即座に止め、俺の肩に飛び乗る。ブラックにとってはフードボウルを舐めるよりも俺の命令を聞くことの方が優先順位は上らしい。飼い主としてはとても誇らしく思えた。


「じゃあ行って……」


「ちょっと! 待ってください!」


 窓を開けて外に出ようとした俺に、慌てた様子で袖女が声をかけてくる。


「ジャケット忘れてますよ!」


 その言葉にまさかと思い、自分の上半身をチェックするが、確かにジャケットを着ていなかった。まさか、自分の代名詞である黒いジャケットを着るのを忘れていたとは、とんだうっかりだ。


 俺は袖女からジャケットを受け取ろうとするが……


「はい。ちょっと動かないで……」


 袖女は俺を静止させ、まるで新婚の妻が夫のネクタイを締める時のように真正面に立ち、ジャケットを俺に着せてきた。


(うおっ……!?)


 これにはさすがの俺も心の中で動揺してしまう。あまりにも距離が近すぎる。女性特有のいい匂いが俺の周囲にただよう。


 戦闘中とかの集中している時は、このくらい近づいていても問題ないのだが、こういった相手にやってもらって手ぶらな時は別。集中していない分、嗅覚が敏感になってくる。


(おおお……!!)


「はい! できました!」


 時間と理性のガチンコ勝負は、理性が勝利する結果に終わった。


 ……なんだろう。別に運動したわけでもないのに、とんでもないほど疲れた。


「……じゃあ、行ってくるわ」


「はい。いってらっしゃい」

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