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あの時の飯

 明日の昼にまた出します

「ん……ふあぁぁ」


 袖女の超くだらない朝ご飯作ってあげよう発言と、地味ながらも超ギリギリだったかくれないんぼがあった次の日の朝。俺は何事もなく目を覚ました。


 今思えば、神奈川派閥での生活の中でもトップレベルに危険な日だった。もう少しで不法侵入者として捕まってしまうところだったのだから。もうすぐでキングへの道がかなり遠ざかってしまうところだった。


(前科持ちだと、まずいかもだからな……)


 まだ寝ていたいと叫ぶ頭を無理矢理起動させ、ソファから体を起こす。ソファで寝ていたからか、体からバキバキと変な音が鳴り響く。何らいつもと変わりがない朝に思えるが、たった1つ、いつもとは違う懐かしい音が聞こえた。


(……何かを焼いてる音、焼き魚か?)


「……んー、なんか作ってるの?」


 寝癖のついた頭を無造作に手で掻きながら、その音の中心にいる人物に問いかける。


「あ、起きましたか」


 その音の中心にいる人物とは、やっぱり袖女。キッチンでエプロンを装着し、せわしなく手を動かしていた。


「待っていて下さい。もうすぐできますから……」


 そう言って、袖女は俺から視線を外し、今作っているであろう料理に再び目を向ける。その目は真剣でありながらも、どこか余裕を感じさせるそんな目だった。


(戦場でもその目をしてたらなぁ……)


 いや、袖女にとっては、キッチンこそが己の1番得意な主戦場なのだろう。それにケチをつけてはいけない。俺はそう考えて、洗面所へ寝癖を直しに行った。









 ――――









「はーい。できましたよー」


 俺が洗面所から出ると同時に、袖女の声が耳に入る。どうやら朝ご飯ができたようだ。


「今行くー」


 袖女の声に対し、まだ気怠げな声で返事をする。さぁ、これから出てくる袖女の料理には、まだ寝ぼけている俺の体を起こすほどの衝撃を与えてくれるのか、実に楽しみだ。


 ただの朝ご飯とわかってるのにこのワクワク。改めて袖女の料理がいかに俺にとって衝撃だったかがわかるほどの心の浮かれ様。抑えなければと思いつつも、朝と言うこともあり、感情が抑えきれず小走りで料理の並べられたテーブルを確認した。


「おお! これが今日の――――ん?」


 テーブルに並べられていたのは、卵焼きに味噌汁、ご飯に漬物……


「……これって」


「あ、ああー……わかっちゃいましたかね」


 当然だ。覚えていないわけがない。だって、これは俺が初めて食べた袖女の料理だから。


「……早く食べよう。冷める前に」


「はい!」


 俺は足早に椅子に座り、箸とご飯の入ったお腕を手に取る。





 つり上がった口角を隠さずに。

 

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