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喫茶店レビュー

 ただ喫茶店を満喫するだけ。

 目の前に出されたコーヒーとサンドイッチ。その光景を見て我慢ができるほど、俺は我慢強くなかった。


(まずはサンドイッチを……!)


 とにかく腹が減っていたため、固形物であるサンドイッチを選択。鼻でパンの芳しい匂いを感じながら、口を目一杯開いてかぶりついた。


(……っ!)


 なんだこのサンドイッチは。薄すぎず、濃すぎず、サンドイッチとして最高の味を引き出している。


 すごいのがサンドイッチの中身だ。中身はレタスにトマト、卵にハムと具沢山で、かぶりついたサンドイッチの断面から具材の芳醇な香りが飛び出してくる。パンの香り、コーヒーの香り、具材の香り、そしてこの店特有の年季の入った木の香り。それぞれ一つ一つが邪魔することなく、香りのオーケストラを作り上げている。


 やはり料理は香り。それを体現したようなサンドイッチだ。


 それに、具沢山なので食べている感覚もバッチリ。これを食べ終える頃には、満足感で腹も心も幸せになっていることだろう。


 感想を考えている内に、食べたサンドイッチが喉をつたい、胃の中に落ちていく。俺はその感覚を体でしっかりと感じ取りつつ、コーヒーを手に取り……


 ぐいっと一口……


「ぐっ……!?」


 その瞬間、口の中に感じた確かな異常。それに抗うすべはなく、思わず声が出てしまった。


 そしてその原因は、簡単に理解できるものだった。


(に、にがい……)


 そう、なんと俺は砂糖とミルクを入れるのを忘れ、完全にブラックの状態でコーヒーを口の中に入れてしまったのだ。


 驚くべき失態。うっかりすぎるミスだ。おかげで幸せだった口の中は台無し状態。今や口の中は、コーヒーの苦味しか感じなくなってしまっていた。


(早く修正しないと)


 俺は慌てて、テーブルに置いてあったスティックシュガーとミルクをコーヒーに入れ、口の中にひと口含む。


「キタ……!」


 砂糖とミルクによってコーヒーの苦味が緩和され、ちょうどいい苦味に変化した。思わず声が漏れる。


 さて、コーヒーの味も丁度良くなったことだし、もう一度サンドイッチを口に入れ、コーヒーを一口飲み込む。


(うおっ……!)


 今まで、口の中に広がった味を表現してきた俺だが、サンドイッチとコーヒーのダブルアタック。これはなんというか、とにかく幸せで形容しがたい。


「おーい、マスター、いつもの……お?」


「……先客がおったか、珍しいのう」


 サンドイッチとコーヒーを楽しんでいると、店の中にヒゲを蓄えたおじいさん2人が入ってくる。片方は白髪でもう片方は黒髪。白と黒、まるでチェスのコマのようだ。


(……いや、今はそれよりもサンドイッチとコーヒーだ!)


 俺は再び目の前のサンドイッチを掴み、豪快にかぶりついた。

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