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楽しい楽しいお祭りの終わり 黒ジャケ本格活動

 俺は今、黒いジャケットを身にまとい、黒髪女との集合場所まで急いでいた。


 というのも昨日、とあるお願いを黒髪女に頼んだのだ。それの為に一度黒髪女と会う必要がある。


「文化祭近くのコンビニだったな……」


 集合場所は文化祭が開催されている東一のすぐ近くにあるコンビニ。そこの駐車場で落ち合う予定だ。


「……お?」


 お目当てのコンビニにたどり着くと、駐車場にはしっかりと黒髪女がアイスクリームを食べながら待っていた。


「……おい」


「ほひ? ……ふぁ!?」


 近づいて声をかけると、黒髪女はやっと俺の存在に気づいたのか、素頓狂な声を上げる。どうやら口いっぱいにアイスクリームをほおばっていたようだ。


「何やってるんだ……」


「ゴホッ……こんなに早く来るとは思わなくて……」


「……? どういうことだ? 予定ぴったりだろ?」


 そう聞くと、黒髪女が少しむすっとした顔になり……


「いや、いつもあなた遅れてくるじゃない……たくさんの女の子に囲まれて」


(ああ……そういうことか)


 この体は藤崎剣斗の肉体だ。かなりモテる男の肉体の中に俺が入っている。その前の事など俺は知ったことではないが、どうやら藤崎剣斗は時間に遅れるタイプの男だったようだ。


(しかもその理由がムカつくな……)


「……今日は文化祭だ。そこに人が集中して人が居なかったんだよ」


「ふーん……そう。病気は大丈夫なの?」


「問題ない。それよりも本題に移ろう」


 目の前の名前も知らない黒髪女と藤崎剣斗の事情など知ったことではない。俺が聞きたいのは別の話だ。



「剣斗も変ね……あの先生のことを調べろだなんて」



 そう、俺が昨日の夜、スマートフォンを介して黒髪女に頼んだお願いの内容。それは、1日目に見逃した4人目の教師の事だった。


 何を隠そう俺は、あの謎の人物が4人目の教員だと睨んでいる。もし4人目の教師が俺を藤崎剣斗の体に変えた組織の差し金なら、他の普通の教師とは違う何かの特徴があると思ったからだ。


「……で、どうだ? 何か不思議な点はなかったか?」


「まぁ、剣斗の言う通りに周りの子にも聞いてみたけど……別段、あの先生だけが変なことなんて何一つなかったわよ? どこにでもいる普通の教師って感じだったわ」


「そうか……」


(さすがに生徒にばれるような事はしていないか……)


「お前から見たらどうだ?」


「んー……私も同じ感じかな……正直あまり話したこともないし」


「……そうか」


(4人目の教師に関する情報は何もなしか……しかし、このまま帰るのはあまりにも無駄足が過ぎる)


「じゃあ、その教師のことじゃなくていいから、この三日間で何か周りに変わった事はなかったか?」


 4人目の教師の直接的な動きから情報を入手できなくても、それ以外の人の動きから間接的な情報が得られるかもしれない。


「うーん……あ、そういえば……」


「何かあったか?」


「香里が珍しくメイド服をノリノリで着てたのよ!! 可愛いかったわー!」


(……話にならん)


 しかし、この黒髪女には午後も情報を集めてもらう約束をしてある。もしここで雑な対応をして機嫌を損ねてしまえば、午後に情報を集めてくれないかもしれない。ここは適当に話を合わせておこう。


「……そうか。あの香里が」


(香里が誰かは知らんが)


「そうなのよ!! あの金髪とメイド服がものすごく相性バッチリで……」


 その後、黒髪女はいろんな友達らしき人の話をし、満足したらしく、上機嫌で文化祭に戻っていった。

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