楽しい楽しいお祭りの続き 戦いの2
「やはりそううまくはいかないか……!」
俺、騎道雄馬は飛び交う瓦礫を回避しながら、うまくいかないと人生を嘆いていた。
飛び交う瓦礫の弾幕。襲い来る雪崩のような攻撃。回避できないほどのスピードでは無いが、無視して良い攻撃ではないのは確かだった。
(これでは立ち止まって集中することができない……どうにかして時間を確保しなくては……!!)
静止するための少しの時間。それが俺には必要だった。
つまり、あるのだ。あの瓦礫たちの攻略法。黒ジャケットを切り裂く切り札。
(日ごろの訓練でついに手に入れた一撃……もちろん実戦では使ったことはないので、一抹の不安は残るが、それしかない!)
それに今の黒ジャケットは間違いなく俺を舐めている。
そう思った理由はたった1つ、瓦礫のサイズだ。
俺を確実に潰すなら、大きな瓦礫を複数個使って、当たれば一撃必殺の攻撃を連打するはず。
なのにしない。わざわざ大きな瓦礫を粒状に砕き、当たっても小さなダメージにしかならない。当たる面積も小さくしている。
先に言ったように、大きいまま攻撃すればいいのに……だ。
……つまり、黒ジャケットは俺で遊んでいるんだ。
(くそっ、舐めやがって……)
しかし、これは天啓。今がチャンス。今こそ強くなるタイミングだ。
多少の犠牲は気にしない。一撃のダメージが小さい今しかない。
俺は女を素早く閉じ……
鞘に手をあて、構えをとった。
――――
勝てる! 勝てる! 勝てる!!
俺は心の中で叫ぶもう1人の俺を放置し、頭をぐるぐると回していた。
(このままいけば勝利は確定!! もし何か異常があったとしても、俺の周りに浮遊させている瓦礫を使って防御すればいい!! 何もかも完璧だ!!)
絶対の布陣。そう言い切れるほどの盤面だ。細かい瓦礫の弾幕が何らかの方法で突破された時の対策も万全。正しく完璧。突破されたとしても負けはない。
ここまで完璧な戦闘の組み立てと戦略を立てたのだ。負けるわけにはいかない。
俺はさらに騎道雄馬を追い詰めるため、そこら辺に浮遊させておいた瓦礫をまたしても砕き、騎道雄馬に向けて発射する。
(これで終わりだ!!)
今の量の瓦礫でも精一杯そうに見えるのに、これ以上に瓦礫が追加されれば、ダメージは必死。うまくいけば四肢のどこかが体とさよならしてもおかしくない。
どちらにしろ……さらに有利になるのは間違いなかった。
……が。
(何……!?)
目の前で行った騎道雄馬の行動に、そんな考えは吹っ飛んだ。
なんと騎道雄馬は、飛び交う瓦礫のつぶての中で目を瞑り、抜刀の構えを取り始めたのである。こちらから見たらあまりにも愚行。
そして、俺の知っている騎道雄馬は策もなしにそんなことをしない。
(とにかく……止まっているのなら、最高速で一気に仕留める!!)
俺は瓦礫のつぶての速度を一気に引き上げ、マックスの100キロ近くまで引き上げる。あそこまで小さいと目で追うことさえ困難。まともに受ければ、散弾銃を打ち込まれた後のように、小さな穴ぼこだらけになるだろう。
対する騎道雄馬は、抜刀の構えを解かず、身の回りに水の膜を発生させた。いわゆる水のバリアといったところだろう。
(だが通る! この瓦礫のつぶてなら! この速度なら確実に!!)
ここにきて瓦礫を粉々に砕いたのが功を奏した。
瓦礫を小さくしたことにより、水の抵抗を受ける面積が少なくなり、水のバリアによる阻害を受けにくい。
そもそもあの水のバリアは相手の攻撃をガードするものでは無い。
いや、正確に言うと"ガードしづらい"と言った方が正しいか。
よく考えてみて欲しい。水の膜を周りに貼ったところで、相手から攻撃を守れるわけない。拳を止められるわけがない。
もちろん、あれはただの水ではない。騎道雄馬が生み出した水だ。拳ぐらいならその水圧で受け止められる。
しかし、水はどこまでいっても水。あれの本質は水の抵抗を生かし、相手の攻撃を軽減することにあるのだ。
その点、瓦礫のつぶてなら面積が小さく、水の抵抗による威力の軽減を受けにくい。完全に偶然だが、俺は前々から水のバリアに対して対策をしていた。
案の定、瓦礫のつぶては水のバリアを突き抜け、騎道雄馬の体に小さな穴を作り出す……が。
「……抜刀」
致命傷を与えるまでに……時間がかかりすぎた。
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