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幕間 一瞬の勝負

 読みやすく……伝えやすく……頑張ります!!

「ふーっ……」


「……なぁ、本当にやるのか?」


「ええ、もちろん」


 俺と袖女はお互いに一定の距離をとり、向かい合っていた。


 袖女はファイティングポーズを。俺は仁王立ちで向かい合う。その構図は神奈川で戦った時とまるで逆。今では袖女の方がチャレンジャーだ。


 正直、戦って欲しいと言う言葉を聞いた時は冗談だと思った。周りに人がいない状況とは言え、一度俺を怖がり、今もなお怖がっている袖女が戦いを挑んでくるとは思わなかったからだ。


「…………」


 しかし、袖女の瞳に映る生き生きとした感情に、それが冗談ではないと言う事を本能的に感じさせられた。


「……わかった」


 ならばこちらも、全力で行かなければ失礼と言うもの。俺は目の前の袖女に対し、牛と戦った時と同じ位の殺気をぶつける。


「……ッ!!!!」


 袖女は俺がぶつけた殺気に対し、冷や汗を流す反応をとる。当然だ。あの牛の時と同じレベルの殺気をぶつけているのだから。


 そして本気なのは殺気だけではない。これからの攻撃も回避も、その全てが全力。全力を持って袖女を叩き潰すのだ。


 しかし、袖女も兵士だ。何の勝ち目もなく俺に挑んでくるとは思えない。



 そして、唯一俺に勝てる可能性といえば…………



「ハアァァァァァァ…………」



(……やはりか)



 己が持つ全ての力を一点に注ぎ、撃ち放つのみ。


 ゆえに勝負は一瞬。袖女は右拳に全てを注ぎ、打ち込むつもりだろう。その証拠に、俺に大きな隙を見せながらも、その右拳は光り輝いている。


(お前がそう来るのなら…………)


 俺も右拳を後ろに引き、力をためる準備を始める。反射に闘力操作。単純な俺のパワーまで。おれもエネルギーをため始める。


 単純な話だ。強力なパワーには、強力なパワーをぶつけるしかない。ただそれだけの話。




 故にこの勝負、決着は一瞬。




「「…………」」




 あたりが静寂に包まれる。周りに人もいないため、当たり前と言えば当たり前なのだが、ついさっきの殺気やらピリピリした雰囲気はどこへやら。何も感じず、ただお互いに力をため合うのみ。



 そして、その力をため切った時――――



「オォーラ……ナックル!!!!」


「むぅんんん!!!!」



 お互いの拳を、前へ突き出した。



 光り輝く2つのパワー。それはお互いがお互いに向かっていき、そして激突する。


 1つはオーラナックル。それは使用者の拳から飛び出し、超強力なエネルギーを持って向かっていく。


 もう一つは単純なパワー。その拳は衝撃波を放ち、超強力なエネルギーを持って向かっていく。





 そして、2つの巨大なエネルギーがぶつかり合い…………





 爆ぜた。









 ――――









「あー……やっぱり駄目でしたか…………」


「当たり前だ。俺を誰だと思ってる?」


 あの後、俺と袖女のエネルギーの激突は爆発四散し、袖女はエネルギー切れで倒れ、この勝負は俺の勝利で終わった。


「まぁ、俺も危なかったぞ。結局お前のオーラナックルには勝てなかったしな」


「…………でも、あなたにはまだ余力があった」


「……否定はしない」


 そう、あの一撃を放った後でも、俺はその場で地面の感触を確かめながら、俺はその場に立っていた。


 ……正直、袖女のエネルギーをその肌で感じても俺は脅威に感じなかった。


 ちょっと前の俺からすれば、それは申し分ない脅威だっただろう。しかし、今の俺は十二支獣5体と交わり、闘力もかなり膨れ上がっている。その量は、袖女の全てのエネルギーと同じ量のエネルギーを10回連続で使っても、まだ立っていられる量だ。


「まったく…………どんだけ強くなるんですか……」


「…………夢を叶えるまで」


 そうやって、俺たちは何にも遭遇することなく、家に帰った。









 ――――









「じゃあ……もう…………」


「おう」


 夜の8時。家の玄関で俺と袖女は話し合う。


 俺はあの後、袖女との何の変わりもない時間を過ごし、ついにお別れの時が来た。


「なんだかんだ1ヵ月ぐらい居させてもらいましたけど……そこまで居心地悪くはなかったですよ」


「そうか……ま、元気でな」


 この1ヵ月弱の2人暮らし。結果的には袖女を居候させるのは大成功に終わった。掃除に風呂洗いに洗濯にご飯に……とにかく、家でやらなければならない事は全部やってもらっていた。おかげで任務に集中できた。



「では…………」



 袖女はがちゃりとドアノブをひねり、ドアを開けて………



「……また来ます」



 ドアが閉まった。









 ――――









「ふぅ……」


 袖女を見送った後、俺は息を吐き、リビングのソファに座り込んだ。


(また来ます……か)


 なんだか1段落した気がする。袖女の足音がしない部屋はいやに寂しい。昨日は肉体的に相当疲れたが、今日は精神的にドッと疲れたような気がする。


(もう寝よ……)


 まだ8時だが妙に体がだるい。明日は任務もないし、のんびりするのは明日からにしよう。


 俺はそう考え、ベッドの中に潜り込み……そのまぶたを閉じた。





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