機転
昨日は投稿できず、申し訳ありませんでした!!
これからも「底辺男のミセカタ」をご覧ください……!
「ぎっ……がっ……」
虎を倒せたとしても、人数不利には変わりがない。俺に向かって絶え間ない攻撃が遅いかかる。
兎の青白い物体に龍の水と炎のブレス。3つだけじゃないかと思うかもしれないが、攻撃速度が2つとも尋常ではないため、回避するのは至難の業だ。
無論、攻撃が掠ったりすることもあるわけで……
「はぁ……はぁ……」
今の俺は腕の所々が焼け焦げ、肩や脇腹からは水のブレスによる切り傷。青白い物体によって足の太ももなどの肉が所々えぐれていた。
体力は限界に近い。まだ戦って30分も経っていないのにこのザマだ。
おそらく、敵の攻撃を回避するために絶え間なく運動してしまったので、その分体力の消耗が早くなったのだろう。
(全力で動けるのは……あと5分ってところか)
このまま体をフル稼働し続ければ、5分程度でスタミナ切れを起こしてしまう。しかし、フル稼働しなければ、あの獣達の攻撃を回避する事は不可能。
「ふーっ……ふーっ……」
普通の人間ならば、迷いなく逃げの一択を選んだ事だろう。
だが、俺は普通の人間ではない。それはもう自覚しているし、受け入れているし、もう普通の人間には戻りたくない。
だからこそ――――
「戦いにだけは……負けない!!!!」
俺は足を踏み込んで、十二支獣達へと駆ける。その勢いはとてつもなく、さっきまで居た場所のコンクリートが吹っ飛ぶほどだ。
もう時間はない。策も使った。もう同じ手は通用しないだろう。ならば後は、とっさの頭の機転を活かすしかない。
俺は駆けている途中、龍のちょうど前に向かって、石の破片を闘力操作を使って投げつける。
その一撃は、見事に龍の目の前のコンクリートの地面に着弾し、その周辺のコンクリートが砕ける。
無論、龍が足をつけている地面もだ。
「ガギャ……!?」
俺が今までの戦闘でわかった事。それは龍の移動能力の無さだ。
龍は最初に戦闘が始まってから、ほぼ移動していない。俺に向かってブレスを放つために、角度を変えた時ぐらいだ。
と、言うわけでコンクリートの破片で足場を崩し、龍の体制を崩したわけだが……
「ガギ……グルア……」
龍は体制を崩すと、ヨタヨタとまるで老人のように、足をプルプルとさせながら、ゆっくりと立ち上がろうとする。
普通ならば、急いで立ち上がり、その場を移動するはずだ。いくら移動が遅いとは言え、4足歩行なのだから、2足歩行の動物よりは立ち上がる速度は速いはず。なのになぜこんなにものろのろと立ち上がろうとするのか。
答えは龍の体格にある。龍の体格は4足歩行でトカゲに似ている。目はギョロリとしており、腹が出ている。
……そう。腹が出ているのだ。
龍は普通に地面に立っている時も、地面に触れるか触れないかのスレスレの位置に腹を置き、俺に向かって攻撃していた。わかりやすいように車で例えると、とんでもないほどシャコタンなのだ。
わざわざそんな位置に腹を置くメリットなどない。という事は、そこに腹を置いているのではなく、そこに腹を置くしかないと言うことだ。
つまり、腹の重さに龍の体は耐えきれていない。だからここまで動きが遅いのだ。
ブレスも吐いていない今なら、龍の首を捻じ切ることなど容易。当然俺は龍に向かってまっすぐ進むわけだが……
(そうくるよな!!)
どれだけ知能が低い動物でも、仲間意識と言うものは存在する。
それを証明するかのように、俺と龍の直線上に兎が現れた。
兎自身におそらく耐久力はない。身を犠牲にしての健気なガード。自分がやられようとも、龍が移動できる時間位なら稼げると言う事だろう。
だが…………
「出番だぞ!! ブラック!!!!」
俺と兎の間に現れる黒い影。それは小さいながらも、確かな存在感を放っていた。
――――
「おお!! まさか龍の弱点に気づくとは!!!! さすがの着眼点だ!!」
「……ふん」
一室にて、ベドネは興奮気味に、ネーリエンはつまらなそうに目の前のモニターを見ていた。
「……問題ない。あの程度の人間、龍1匹で対処できる」
「強がりはやめた方がいいよ?龍ではもう彼には勝てない。1億かけてもいい位さ」
そうやって、まるで子供のような言い合いを続けていると、ある1つの報告が入った。
「すっ、すいません!!」
そう言いながら、1人の男が部屋へと入ってくる。見たところ、2人よりは階級は下のようだ。
「なんだい?今忙しい……」
「侵入者です!!!!」
「……はぁ?」
「大阪派閥本部に……侵入者が現れましたぁ!!!!」