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その時

 武勇伝でんでんでんででん。

「ただいま〜」


「ワウッ!!」


 午前11時、俺は家にたどり着き、家のドアを開けた。


 帰っている途中、俺もいろいろとブラックの事について考えてみたが、結果的には保留と言う形に落ち着いた。ブラックが大阪の手先と言う可能性も考えたが、そもそもブラックと俺との出会いは、道路でばったり会っただけで、確定的な要素は1つもない。大阪派閥がブラックを道路に置いたと言う可能性も考えたが、大阪派閥ほどの大派閥がそんな不確定要素が絡むところにブラックを配置するだろうか。


 そんなことをするんだったら、俺の家を特定した後に、ブラックをその家の前に置いた方がよっぽど安全だ。


 となると、ブラック本人は何も知らず、ブラックの体のどこかに監視カメラか何かが埋め込まれているのかと考えたが、そんなものがあるなら、とっとと俺の家に奇襲をかければ良いはず。それをしないとなると、大阪側も俺の情報を知らないと言う事だ。


 そもそも、俺とブラックが出会ったのは大阪で騒動を起こす前の事。未来予知でもなければ、事前に俺の下にブラックを送り込むなんて事は不可能だ。


 だったら、まだ別に家に置いていい。ブラック自身役に立つ時もあるし、ブラックが居ることによって暇な時も時間を潰せている。


 スパイでいないのなら、家においた方が確実に利益が多い。


「裏切らないでくれよ〜」


「ワン!!」


「ふっ……わかってるのか?」


 そんなたわいもない会話をしながら、玄関を通り、リビングまでたどり着く、袖女はまだパート中の様で、家の中にはいない。久しぶりに俺とブラックだけと言うわけだ。


「……何かするか」


「ワン!」


 そのまま時間は過ぎていった…………









 ――――









「……何やってるんですか」


「あーおかえりー」


 そのまま2.3時間経った後、袖女が家に帰ってきた。家にいる袖女は見た事あるが、パートから帰ってきたばかりの袖女を見るのは初めてだ。


 しかし……


「ふー……」


 いくら袖女と言えど女は女、仕事から帰って汗をかいている女性と言うのはかなり官能的だ。


 でも、こいつが袖女だと思うと、そんな男子特有の考えも消え失せてしまう。異性でも人によってこんな感情を抱くのかと驚く位だ。


「……? 風呂に入ってきます」


「え、あ、ああ……」


 こういう場面に出くわすたび、「こいつが袖女じゃなかったら……」と何度でも思ってしまう。異性と認識してはいるのだが……うん。


 袖女が風呂に入っている間、俺はこれからの事について考え込んでいた。


 監視カメラがブラックに無いとは言え、あの虎には無いとは言えない。俺の姿かたちを認識され、捜索されればチェックメイトだ。


 ……つまり、大阪には長くはいられない。


 大阪での生活。その終わりの足音が、刻一刻と迫っている気がした。









 ――――









 数分後、袖女が部屋着を着てリビングに上がってきた。


「あがりましたぁよ〜」


 袖女が独特のトーンで風呂から上がってくる。やはり袖女とは言え、女が風呂から上がってくる姿はとても……いや、これはついさっき言ったか。


 さっき、もう大阪に入れなくなるかもしれないみたいな発言をしていたが、今のような現常が続けば、大阪から出る必要は無い。


(これが続いて欲しいもんだな……)


「あ、あと、次から私も任務に行きますね」


「へ?」


「いや、ですから」


「私も任務に行きますから」


「はぁ?」


(は?)


 マジで意味がわからない。俺1人でもできる任務が多い中、袖女が俺と一緒に任務をする理由はない。


「だめだ。お前がいる意味がない」


「別にいいじゃないですか、受けれる任務の幅が広がりますよ?」


「今のままでも充分だ。それにお前、パートはどうするんだ?」


「別に休みますよ。もともと稼ぎ少ないし」


「だがなぁ……」


 約束は約束だ。約束をないがしろにされては困る。せめて理由を聞かねば。


「……なんでそんなこと聞くんだ?」


「…………任務ですよ任務。私が神奈川に課せられた任務が……まぁ、そういう感じのやつなんですよ」


「あー……」


 なるほど、それならば納得だ。


 元々、袖女が大阪に来た目的は神奈川から出された任務をこなすためであり、のほほんと旅行しに来たわけではない。

よくよく考えてみれば、神奈川と同盟を組んでいる東京と仲が悪い大阪のものをとってくると言う任務を袖女に押し付けた可能性が高い。


 そんなのパートをやっているだけではいつまでたっても達成できないと考えたのだろう。


(…………)


「……それは、どれくらいのでかさのものなんだ?」


「……まぁ、結構」


「……じゃあ、こうしよう」


 俺は袖女の気持ちも汲み取り、その間の折衷案を伝える。


「メールからどでかい任務が来た時だけお前に同行して貰う。お前だってちっこい任務に時間を取られたくないだろ?」


「……まぁ、それなら」


「よし、これでこの話は終わりにしよう」


「……勝手に任務に行かないでくださいね?」


「わーってるよ」






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