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シエルの成長と嫉妬


シエル視点でのドラゴン完結後の物語です。

主人公たちが、ただイチャイチャしています。

だがしかし

R18は今の所、書く予定はありません(苦笑)



それは、二人が村で結婚式を挙げた翌日のことだった-----・・・




「あ、シエル。おはようございまーーーーー・・・」

「メル!!メル!!見てくれ!我、大きくなったぞ!」



我の声に振り向いたメルは、我の姿を認めるなり笑顔のまま固まってしまった。

完全フリーズしたまま動かなくなったメルに、我は首を傾げると愛しい人の名をソッと呼ぶ。


「メル・・・?」


我の声にメルはハッ!とした表情を浮かべ数度瞬きすると、改めて我の姿を上から下までじっくり観察するように見つめてきた。

長く伸びた足から、胴体、胸、肩と視線が移動し、我の顔を凝視すると、また動かなくなってしまったメル。

彼女の頭の上に浮かぶ?マークが目に見えるようだ。

我が自身の番だということは理解したが、急な成長を遂げた我のことにどうやら頭がついていっていないみたいだ。

そんな彼女の瞳の中に恐怖や嫌悪の感情が見当たらないことに、我はホッとしていた。


突然竜から人間(ひと)の姿をとった時も、気持ち悪がらず、ただ驚いただけですんなり我のことを受け入れてくれた彼女のことだ。

突然成長しても受け入れてくれるだろうと思ってはいたが、やはり少し不安でもあったのだ。

メルから恐怖や嫌悪の目を向けられるかもしれないと考えるだけで怖かった。

だが、それは完全に我の杞憂だったようで安堵した。


しかし、我を無言のまま見つめていたメルは、どうやらそれどころではなかったようだ。



「え・・・?え・・・??本当にシエル??シエルですよね???え?えええ?」

「うむ!我だぞ!」

「えええええ???何故そんなに急激に身長が伸びて?????え?突然すぎますよ?!!」


朝食の準備をしていたメルが戸惑いながら、我に近づいてくる。

どうやら相当驚いているようだ。

それはそうだろう。

我の身長は夜の間にぐんぐんと伸び、メルの半分程しかなかった背丈は今ではメルを見下ろすまでに成長しているのだから。

そう!我はメルを見下ろせるようになったのだ!

近づいてきたメルのつむじを見ながら、ニンマリと笑みを浮かべると我はメルをギュッと抱きしめた。


「・・・?!ちょっと、ちょっと、シエルさん?!!」

「ふふ・・・メルが腕の中にスッポリ入るぞ」


我は、自分の腕の中に抱き込んだメルの頭に頬を摺り寄せる。

すると彼女の身体から、ふわりと良い匂いが香った。

メルの柔らかな身体からは、いつも良い香りがする。

その香りを思う存分に吸い込む。

彼女の香りは、とても心が落ち着くのだ。




彼女は自分のことを『どこにでもいる平凡な人間だ』と口癖のように口にする。

だが我はそんなことはないと思うのだ。

確かに焦げ茶色の髪も、茶色の瞳も、人間たちのなかではありふれた色彩だと思う。

しかし我は、彼女の姿かたちはとても好ましいと思うのだ。


パッチリとした二重の瞳はいつも楽しそうにキラキラと輝いている。

薄い唇は常に笑みをたたえ、朗らかに笑っていることの多い彼女。

細すぎず太すぎずスラリと伸びた肢体を軽やかに動かし、積極的に行動している姿は、回りを明るくしてくれている。

なので我は、彼女は普通に人に好かれる性格や見た目をしていると思うのだ。


そんな彼女は現在我の腕の中にすっぽりと包まれている。

大きくも小さくもない、ちょうど良いサイズの胸の膨らみが、我の胸に触れていて、その柔らかさにソワソワしてしまう。

だが、彼女は異性との触れ合いに、ほとんど動揺を見せないのだ。

メルと家族になってから我は、ほとんどの時間をメルに引っ付いて過ごしてきた。

激しいスキンシップや同じ寝具での同衾にも、メルは慣れてしまっている為、我の性別を全く気にしてくれない。

我が「雄」だということを、少しは気にしてくれてもいいのに。

メルは我のそんな気持ちに全く気づいてくれないのだ。


彼女の柔らかな身体を抱きしめ、存分に堪能していると、我の背に腕を回し成長した身体を確かめるようにぺたぺた触れていたメルが戸惑いの声をだしている。


「えええっ・・・??どうして?昨日まで私より小さかったのに???成長期?いえ、成長期だとしてもそんな???」


眉を下げ、戸惑いの表情を見せながら我のことを見上げてくるメルが恐ろしく愛らしい。

我は、ぎゅうぎゅうとメルを抱きしめながら、簡単な種明かしをする。


「我の力が戻ってきている。だから大きくなったのだ」

「力?」

「魔王と戦った時に失われてしまった力だ。力がなくなったから我は弱体化し幼体になっていた。だが、メルと正式な番になったので、その力が少しずつ戻ってきている」

「そうなんですか?」

「うむ、そうなのだ。それに我はもっと成長すると思うぞ?」


我が幼体になる前。

人型の姿をとった時、いつも高身長だったのだ。

今は180ぐらいだとして・・・

最終的には2mぐらいにはなるだろう。


そう言うと、メルは顔を曇らせて瞳を伏せた。


「どうした、メル?」

「・・・これ以上成長するのですね・・・。今後貴方の頭を撫でてあげることも私の腕の中に抱き締めてあげることもできないのかと思うと寂しくて・・・」

「大きくなった我のことは()でてくれないのか・・・?」


メルの言葉にショックを受けていると、彼女は慌てて頭を横に振った。


「そんなことありませんよ!どんなに成長しても私がシエルを愛でないなんてことはありません!」

「そうか・・・良かった・・・」


我が微笑むと、だがメルは寂しそうに微笑み返した。


「・・・どんな生き物でも必ず成長するものです。ですがシエルはその成長が急過ぎたので驚いてしまいました・・・本当にずいぶん大きくなってしまったのですね」


そう言い、メルは我の背中を優しく撫でだした。


「シエルの成長を見守れなかったのが残念です・・・」

「突然大きくなってしまってすまない・・・こんな我を、これからもメルは愛でてくれるか・・・?」


我が不安そうに瞳を揺らしながらメルを見つめると、メルはまっすぐ我を見つめ返してきた。


「・・・逆に聞きたいのですが。シエルは大きくなっても私に可愛い可愛いって撫で撫でされるのは平気なのですか?嫌ではありませんか?他の人から変な目で見られるかもしれませんよ」

「気にならないし、かまってくれないと我は寂しい!メル・・・小さくなることはできないが、我は自分の成長を緩めることができる。今の見た目はメルと近い年齢になっていると思うし、これ以上急成長しないように力を抑える」

「え、そんなことが出来るのですか?でもそうですね・・・そうしてくれると助かるかもです。また急に大きくなったらビックリしちゃいますからね。けど・・・これは慣れるまでにしばらく時間がかかりそうですね」


メルは優しい表情で笑みを浮かべながら、我を見上げてくる。

その彼女の瞳からは溢れんばかりの愛情が感じられた。

その瞳を見ていると、胸がきゅーとなり、愛しさが溢れてくる。

我はメルを強く抱きしめた。


「メル・・・愛している」

「痛い、ちょっ・・・痛いですよ、シエル!力を緩めて!」


ペシペシと必死な様子で我の腕を叩いたメルは、そのまま嫌がらず緩めた我の腕の中に納まってくれている。

深く優しく我を受け止めてくれるメル。

そのことが嬉しくてたまらない。


「それにしても・・・本当に驚きの変貌ですね。見事に美少年が美青年になりましたよ。美しさに磨きがかかったご尊顔がグレードアップされていますよ、シエル」


メルが我の顔をマジマジと見つめてくる。

そんなメルの額に自身の額をコツンとあて、彼女の瞳を覗き込んだ。

彼女の紅茶色の瞳に映る自身を見る。


「我の顔は嫌いか?」

「・・・いえ、この顔を嫌える人がいるなら逆に会ってみたいものです。この先シエルの顔はどれだけ見ていても飽きるということはないでしょう」


そう力説するメルに笑みがこぼれる。


「そうか。嬉しい・・・」

「う”・・・」


メルが突然顔を真っ赤にして、うつむいた。

我はそれに首を傾げる。

どうしたのだろう?


「イケメンすぎますよ、シエル!!!!これは!私の身が持たない!!」

「メル???」

「まさかこんな日が来るなんて!!シエルの顔面が凶器です!!!!心臓がもたない!!!!」


見悶えているメルがあまりにも可愛いので、我はだらしなく笑み崩れると、改めてメルを腕の中に閉じ込めた。










ある日のこと。

我はメルが食事の支度をしているのを、彼女の背後にピッタリとくっ付きながら眺めていた。

メルが作っているのは家族の食事ではない。

そう、あの者たちの食事である。


メルは鼻歌を口ずさみながら、その食事の食材を皿に盛ると、皿を持ち庭へ向かった。

我はそれにピッタリと着いていく。


「皆さーん!ご飯ですよー!」


庭に出たメルが皿を地面に置き、声をかける。

その声に、草葉の影から毛玉が複数飛び出してきた。


「ニャー!」

「ミャー!」

「ニャー!」


元気な声で腹が減ったと大合唱しているのは、以前家の庭で生まれた猫の子供たちだ。

もうだいぶ大きく成長している毛玉を、メルはとても可愛がっている。


メルにすり寄る毛玉は、全部で4匹

子供たちの名前は、メルが名付けた。


白い毛並みの子は、おもち

黒い毛並みの子は、あんこ

茶の毛並みの子は、きなこ

三毛柄の子は、ずんだ


何故ずんだなんだ?とメルに問いかけると、瞳の色が綺麗な緑色だからと言っていた。

ところで、ずんだとは何だろう?

そう伝えると、今度ずんだ餅を作ってくれるという。

どうやら食べ物の名前だったようだ。

メルは、魔の森で枝豆に似た豆を見つけたと嬉しそうに語っていた。

枝豆が何かはわからないが、メルの作る物は何でも美味しいので、我は楽しみに待っていれば良いのである。


「みんな、元気いっぱいですねー。ご飯いっぱい食べて下さいねー」


メルがニコニコ微笑んでいる。

猫の子どもは、メルが持ってきたご飯に飛びついた。

それを優しく見つめるメルは、まるで聖母のようだ。

我がジッとメルを見つめていると、再び茂みがガサリと動いた。

そちらを見ると、一匹の猫が静かに佇んでいる。

その猫を視認した途端、メルの表情が一変した。


「ニャーン」

「!!!猫さん♡♡♡」

「ニャー」


その毛玉は、ゆったりとした気品さえ感じられる動きでメルへ近づくと、メルの足下に擦り寄り、そのもふもふでメルを骨抜きにしていく。


「あああああ、猫さああん♡♡♡」


ふにゃんと表情を崩し、笑み崩れるメル・・・

そしてメルはしゃがみ込むと、その猫の身体を優しく優しく撫でてやっている。


「猫さん、相変わらず素晴らしい毛並みですね!!」

「ニャー」

「ん”ん”ん”!!!!可愛い!!!!」


身悶えるメルと、それを当たり前のように享受している毛玉・・・

我はその姿を唇を噛みしめながら見ていた。




・・・言葉通り毛玉を猫可愛がりしているメルだが。

猫の子ども共は、正直我の敵ではないと思っている。

我の真の敵・・・それは、「ネコサン」である。

あいつは手強い。

猫の子らの母親で、メルが一番気にかけている存在。

それがネコサンだ。

正直、我以上に可愛がっているのではないか?と疑うことがあるぐらいだ。

嫉妬の瞳を向けていると、メルはすぐに気づいて「一番可愛いのはシエルですよ」と言い抱きしめてくれるが。

・・・それにしてもだ!

ネコサンには特別甘い声音で話しかけているメル。

メルはそのことを自覚していない。

我はそのことに焦燥感を覚えてしまうのだ。

メルの一番は我だという自負はある。

だが!!しかし!!

これは理屈ではない!!

我はネコサンに嫉妬してしまう。


この感情はメルといるようになってから感じるようになったものだ。

メルと一緒にいると初めて覚える感情がとても多いのである。


愛しいも

楽しいも

悲しいも

触れたいも

誰にも渡したくないと思うのも・・・

メルだけ・・・

メルだけなのだ。


なのに、メルは我以外によく目移りしていると思う。

メルは我の番なのに!

我は負けぬぞ!

ネコサンにも、他の奴にも我は負けぬ!!!!!

メルは絶対に誰にも渡さない!!!!

そう心に誓う日々。

毎日毎日好きの気持ちが降り積もって行く。

こうして今日も穏やかな日々が過ぎていくのである。





再登場の猫さんたちです。

感想を頂いた方から、猫さんと仔猫たちに名前をとのリクエストを頂き、名前を考えさせて頂きました。

しかし、猫さんは「猫さん」で名前が定着してしまいました(笑)


感想本当にありがとうございます。

楽しんで頂けたら嬉しいです。

次は魔王視点を更新予定です。

次のお話も、よろしくお願いいたします。


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