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サルウァトル ―ROYAL EDITION―  作者: 天津風楓
2/3

I 出発

「さっそく、活動を開始しよう」


フラジールと私は一緒に今朝ごはんを食べている。外は晴れていて、日差しが窓にさしてきている。小鳥は囀っている。口に入る温かなパンも最高。昨日とは違い、今日はすごく落ち着ける気がする。


「活動って......どんな?」


「ほら、例の15人よ。その15人と合流することが、私たちに与えられている使命なの」


「え?15人は世界各地にバラバラで活動してるって言うの?」


「残念だけどその通り。この世界と別の世界じゃ時間が違うからなのかもしれないね」


15人が1人ずつバラバラで活動しているのならば、相当長い時間がかかりそうだ。


「あぁ、『分かたれし世界』のこと?この事なんかイマイチしっくり来ないというか信じ難いというか......」


「そうそう。あなたの住んでいた地球がある世界、通称『原初の世界』とあと15個の『他の世界』はそれぞれ別々の時間を歩んでいるからよ。例えば、ユティクの1年が『ティファレト』では40年らしいわ」


てぃ...ふぁ...れと......???またまた聞きなれない言葉がでてきた......。どうやらユティク以外の世界の名前らしいが、こういうのがあと14個あると思うと気が遠くなる。


「世界って全部名前あるの?」


「うん。原初の世界がここらじゃ『レントイム』。他の世界が『ユティク』......」


「えぇ〜......めちゃくちゃ沢山ありますね。覚えにくい......ていうか、なんでそんなに世界があるんですか?」


「大昔、自然の理を破壊しようとした文明が、レントイムにいたらしいの。その名が『ゴルス』。彼らは宇宙上にある星の半分以上のエネルギーを自分たちだけのために使って荒廃させた。それをくいとめるため、破壊神は抵抗しようとしたが、力が足りなくて破壊にまで行き届かず、分解にとどまった。と言われてる。神話だから信憑性低いんだけどね」


フラジールはすんごいぶっとい本を持ってきてそれを読みながら説明してくれた。黒幕はゴルスという組織というか文明であって、それをくいとめるために創造の神と破壊の神が力を合わせている、ということ。そして、私が暮らしていたとされる地球のある世界がレントイムと呼ばれているということ。これらが真実なのかは定かではないが、とても重要な問題であることは承知した。


「王から手紙を授かってる。これ見て」


――望月一千華よ、この文を読んでいるのであれば、これに従って欲しいことを伝える。まずはルイン領土「リライア」に行き、そこで任務を行っている『若月金弥(わかつき きんや)と合流し、共にそのものの行う任務を完了するのだ。これはアメーシュ殿にも同行してもらう。


「早速任務か……」


「一千華、気を落とさないで。はい。これ付けて」


フラジールは私に宝石がはめられたブレスレットを差し出した。


「これ、王族やその側近、兵士はみんな持ってる。名前は『アルケイン』っていうの。これがあれば内なる能力を引き出せるし、ユティクとの契約でもたらされた力だって使えるようになるよ」


アルケインを腕につけた時、もう二度と外れない気がした。


「リライアは極寒の地で、主に氷によって理が乱れた地。地球で言う東南アジア諸国あたりのことかな。それにしてもいきなりあそことは......ちょっと手強いかな......。でも大丈夫。私もついてるから。じゃ、行こうか」


フラジールに続いて家を外出し、港へ向かった。


「おいそこの嬢ちゃん......。なんか持ってんのか?言ってみろよ」


なんだなんだ!?港に向かっていると、見知らぬ汚いおじさんが3人ほど近寄ってきた。たぶんアヤシイ人かな?どうしよう......。


「その......アルケインってやつ。よこせよ」


「ダメ。これはユティクと契約を交わしたものだけが使えるものなの!あなたたちに扱えるものでは無い!」


フラジールめちゃ怒ってる......。アルケインの重要性が読み取れる。どうやらアルケインがこの人たちにとっては宝に見えているらしい。これをつけて思ったことと言ったら二度と外せない気がしたことだけだ。


「さっさとよこせ!」


走って襲ってきた!やばい......。どうしよう......。アルケイン......。なんか魔法とか使えたりして......。あぁ。もう。なんでもいいからとにかく手を前にかざしてみよう......。


襲ってきた3人が一瞬にして吹き飛んだ。


「......一千華......。さすが!」


「え......?つよくない?」


ヤバい魔法手に入れた!でもこれ自分の能力じゃなくてただアルケインの力を借りてるだけだと思うけど......。でもすごい。これは役に立ちそうだ。


「思った以上にあなたのアルケインは強かったようね。どうやらシャルカタの力を授かったらしいよ」


「シャルカタ?」


「風の神様。と言っても、私たちが信仰してる十二神のうちの1つなんだけどね。ルインとかにも色々いるから同じような力を使ってくる。十分気をつけないと。」


「うん......。えっと......アルケインについては船で詳しく聞くね」


「分かった。いっぱい質問してね」


倒れ込んだ3人のおじさんを後にして、私たちは港へ歩いて行った。


***


「やあ。待ってたよ。君たちのことかね。リライアに行くってのは」


「はいそうです。よろしくお願い致します」


船乗りが港で私たちを既に待っていたようだ。さすが王様。情報の流通も早い。さっそくこの大きな船に乗る。思っていたよりもずっと大きい。海賊船みたい。


船のホーンが鳴り響き、出航した。私たちは部屋で昼食を食べながらアルケインについて話していた。


「この......アルケインって一体何なの?」


「アルケインは、この世界を代表する強化装置、とでも言った方がいいかな。その石に込められた力を自身のために引き出せるようにする役割があるの。たとえばあなたはさっき3人の男を一瞬で吹き飛ばせた。これはこの石に込められた風神シャルカタの力が引き出されたってことね」


「神様の力を使ってるの?」


「その通り。私たちの故郷、エルベラン王国では十二神と呼ばれる十二種類の属性の神が信仰されてる。基本的にエルベランではこの十二神から力をさずかってアルケインを作るわ」


世界共通の強化装置、ということは敵であるルインも持っている......?だとすれば絶対必要になるキーアイテムじゃん!これがないと勝ち目もなかったかも......。


「アルケインってルインも持ってるの?」


「世界共通の強化装置だからね。持ってるよ。しかも、私たちに対して耐性を持ってる。だからより強力なアルケインを準備してからルインとの戦争に望まないと......」


フラジールが話していたその時、船が横へ激しく揺れた。波の轟音が聞こえてくる。それと共に、怪獣なのかなんなのか分からないけれど、遠吠えのようなものが外で響いている。慌てて窓を開けて外を見ると、そこには竜のような体をした巨大な生物が船の前にいた。


「フラジールさんッ!!水神ですッ!!水神リヴァイアサンですッ!!あぁ、船が沈んちまうぜ......!」


船乗りは大慌て。『リヴァイアサン』と呼ばれているこの生物はなにか話しかけてきている。


――汝、向かうところを申せ。


「え?あ、えーっとリライアです!」


――我の滅ぼした国へ行くと申すか。愚かな。その所、既に理は乱れている。何時のの行くべき場所ではない。


なんて言えばいいんだろう......。「フラジール......何か言ってよ」と小声で喋った。


「水神よ、私たちはエルベランの王の命令によって参る。どうか許しを」


――あのところに行った者、誰も帰らず。待つのは死のみ。それをもって行くと申すのか?汝の心が大事である。我は汝が心配である。


「必ず帰ってみせる。ここに誓う」


――ならば今さずけるこの石を持て。呼べば汝の力となろう。くれぐれも死ぬでないよう。


リヴァイアサンは海の底へと潜って行った。船の床には、青く輝く石が落ちていた。それはただの石のようではなかった。常に青色の光を放っている。


「これはもしかして......アルケインになる......のかな?」


「どうだろう?」


「......知ってる?リヴァイアサンって可哀想な神様なんだよ」


「え?」


フラジールはリヴァイアサンについての話をし始めた。私はその話を黙って聞いた。


「リヴァイアサンは大昔、リライアの神全てを敵として戦っていたの。しかも、別の文明からも攻撃を受けていた。彼女、全てを超越したような力の持ち主だったからかもしれない。その力を狙って他の文明からは捕獲されようとしたり、時には集団攻撃を受けたり。リヴァイアサンを守ろうとした人達がみんな死んでいったのをいつも見ていた。でも彼女は負けなかった。今では敵だった文明は4ゆつ滅びていて、今対抗してるのはエルベランと同じルイン。そんな彼女に認められたって言うのは、とても名誉あることなの」


「そうだったんだ......。私何も知らずにリヴァイアサンのこと化け物だって思っちゃったな......ちょっと失礼だったかな」


リヴァイアサンって性別は女なんだ。ていうか、神様にも人間と同じ概念があるんだ、と思う。人間が進行したために生まれた存在だからなのだろうけど。この青い石からは、さっきの話を踏まえてもう一度見ると、輝きからは哀しみの色が見える気がした。


「そんなことで怒るような神様じゃないよ。中入ろう」


私たちは再び部屋の中へ入っていった。

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