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脱出

「ぐうぅぅ…」


何が起きた…頭が痛い…

揺れた後、気を失ったのか…?

頭に手をやるとヌルっとしたものを感じる。

怪我をしたのかと思い慌てて手を見ると、粘性のある青色の液体が俺の手を汚していた。

金属が軋むような音が聞こえる。


「何だ?これ、血じゃねえ…」


頭が多少ボーっとしてるが周囲に目をやってみると、ペップが血を流して倒れていた。


「ペップ!!うおっ?!」


どうやら俺が寝てたのは、床じゃなくて壁のようだ。おまけに随分と斜めになってやがる。計器類もショートしてるのか火花が散ったり、さっきまで見てたモニターもひび割れて暗くなっている。

どうにか身を起こし、慌ててペップの側による。大丈夫か?

息はあるが、額のあたりから血が流れてる。これは動かしていいのか?

金属の軋む音がだんだんと大きくなっているようだ。メキメキと割れる音まで聞こえ出した。脱出はどうすればいいんだ?


「うぅ…」


すぐにペップが気が付いたようだ。何が起きているのか分かるんだろうか?さっき流れていた血がもう止まっているようだ。


「大丈夫か?しゃべれるか?」

「なんとかね。やられたよ。”ミミズ”だ」

「ミミズ?」


またぞろ敵生体ってやつか。今度のヤツもデカいんだろうな。それより今はどうなってる?なんだかドンドン軋みの音がでかくなってるような気がする。


「今、何がどうなってる?わかるか?」

「これは…ミミズに締め付けられてるのかな?」


ペップは辺りを見回し、頭をさすりながら身を起こしながら呟いた。


「完全には分からないけど、ティキはどちらにしろもうダメっぽい。外に出てみる必要が有るね」

「外に出るって大丈夫なのかよ?」

「出てみなくちゃ分からないな」


気軽に言ってくれる。さっきミミズとやらに締め付けられてるって言いやがったじゃねえか。車なんかよりよっぽど大きいロボを締め付けるって、とんでもなくデカイじゃねえか。


「簡単に言ってるわけじゃないよ」


俺の心を読んだように、ペップが口を開く。


「ミミズは大きいんだ。30メートルは超える。この軋みはたぶんティキがミミズに締めあげられてるんだと思う」

「じゃあどうやって出るんだよ?」

「占められてるって言っても、隙間なく巻きついてるわけじゃない。ハッチを開ければ僕らは出れると思う。それに焦ってるんだよ」


焦ってる?口調からは焦りなんかこれっぽちも伝わらねえぞ。


「もう止まってるけど、頭を切ったようだね?顔に付いてる青いのは、保護溶液だ。それが普通の血に変わったらアウトだ。君がここに現れた意味がなくなる」

「保護溶液?意味?」

「君が目を覚ましたプールの水さ。フェムトから君を守っているんだ」

「守るってどういう…ヤベエ!!!」


ペップの話は気になる事だらけだが、金属がへし折れる轟音が鳴り響く。こりゃあもし本当にミミズとやらに締め付けられてるんだとしたら、もうすぐペシャンコにされそうだ!


「おしゃべりは後にして脱出しよう!君はそっちのハッチが開くかどうか調べてくれ!僕はこっち!」


ようやく少し焦った様子で指示されたので、急いで今は床になっているハッチに走り寄り、開閉スイッチを押してみる。


「ダメだ!開かねえ!」


パネルを何度か押してみるものの、電源が入っていないためか、まったく開く気配もない。なんとかすきまでも開かないかと、ハッチに付いているドアハンドルを力の限り押し引きして見るが、ピクリともしねえな。


「こっちもダメだ!」


ペップはどうやら、他の場所に有った小さめの出入り口を試してみたらしい。


「どうすんだ?他の出口は?」

「そんなにたくさんは無いよ。しょうがないから無理やりあけよう」


こんな鉄の塊みたいなドアをどうやって開けるんだ?隙間一つないぞ…


「向こうは完全にミミズが蓋するみたいに巻きついてるみたいだから、こっちを開けるよ」


そう言いつつドアハンドルに手をかける。さっき俺がやってもビクともしなかったモンが、俺より細身なペップがどうにかできるものなのか?

そう思いつつ少し離れて見ていると、ボコリと音がするような程、一気にペップの腕が倍ほどに膨れ上がった。そしてビクともしないと思っていた鋼鉄のハッチがメキメキと音を立て、へし曲がりながら開いていくのだった。


「良かった、すぐ地面だ。さ、降りて逃げようか」


振り向きながら気軽にそう言う。俺は声も出せずにただただ驚くだけだった。

榛色をしていたペップの両目は、虹彩が淡く緑の光で煌めくように変わっていた。


「あ…ああ」

「これがフェムトの力だね。」


絞り出した俺の返事に、あっさりとした説明が施される。

異形の筋肉の塊となっていた腕は、ハッチを横手に除けると共に、するすると元に戻っていった。淡く光るように見えた緑の目も、元の体格に戻ったと同時に元の色へと落ち着いていく。


「僕はあまり親和性が高くないからね。普段は後方支援だ」

「あれでかよ…」

「まあ、そんなに良い物じゃないからね。それよりも出ようか。ミミズは巻きついた物を破壊するまで離れないから、他の敵性体が出ない限りは大丈夫だと思う」


これ以上は勘弁してくれ。頭がどうにかなっちまう。


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