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着替え

「着替えろ」


結局俺は、ほとんど訳が分からないままに、バティと共にハンガーと呼ばれる場所に移動した。

さっき居た部屋から、小走りで1分程の所だった。移動の間に聞かされた事といえば、


「施設から移動する」

「敵性体に施設は破壊されるだろう」

「敵と戦う」


という事のみだった。正直に言って理解できなかった。

一般人の俺はどうすればいいんだ?本当に、ココには息子はいないのか?

頭がこんがらがって、話に着いていけてない。

俯いていた俺は、どうやらバティに声を掛けられていたらしい。


「着替えって?」

「これだ」


そう言われながら渡されたのは、バティが来ている軍隊が着る戦闘用の服のようだった。


「アーミースーツってやつ?」

「そうだな。戦闘用強化防護服だ」

「強化、防護?」

「お前が今着ている服よりかは、体を守ってくれるだろう」


そりゃそうだろうよ。近所を散歩する服だぞ。ロンティーにジーンズにサンダルだわ。

そういえば、ポケットに、スマホとタバコを入れてたな。

完全に頭から抜け落ちてたが持ち物はたったのそれだけだ。着替えながら確認だな。


「オーレ、接敵までは?」


バティは少し離れたところで何かの準備をしていた他の三人に向けて声をかけていた。

ブラウンの髪の180CM位の線が細身の男だな。白人の年齢は判らないが、随分若そうだ。


「10分ある」

「それだけあれば充分出れるな」


勝手に着替えろって事みたいだな。


とりあえず着替えを試みたけど、まったく分からん着る順番もさっぱりだ。

普通の服みたいに着れるのかと思ったがパーツに分かれてたりするみたいだ。


「どうした?早く着替えろよ」


背が低く、スキンヘッドにしている黒人の男が軽い調子で声をかけてきた。


「着方がわかんねーよ」

「おおっ!そうっだった。すまねえ、すまねえ。」


そんなもんあたりまえだろ。


「手伝うぜ」

「すいません」


謝る必要は無いんだが、手伝ってもらえるとついつい謝り口調になっちまうな。


「ロベルトだ」


握手を求められたので、差し出された手を握り返した。外国人はフレンドリーだな。


「俺はユウイチだ」

「OKよろしく!100%さん」

「なんだよ100%って?」

「まだ聞いてないのか?適合率的なモンらしいぞ」

「適合率?」


慌ただしくて聞けていない、深い所の話のようだが、まったく付いていけない。

さらに話を聞こうと思って口を開こうとしたところで、


「ロベルト、早く着替えを手伝ってやれ!」


バティが話に入ってきた。


「分かったよバティ。装備の時間だ100%」

「すまないが、この戦闘を終えてからキッチリ説明させてくれ。あと8分も無い」


しょうがねえのか?思わず舌打ちが出そうになってしまったがバティはそのまま何かの準備でもするのか離れてしまった。


「すぐにスーツの着替えをするぞ」


ロベルトにうながされて戦闘服への着替えを続け始める。

最初にどこから着ればいいのかも分からなかった。


「全部脱いで、黒いアンダースーツを着るんだ」


全部脱ぐのかよ?恥ずかしいなんて言わせてもらえない感じだったのでおとなしく従う。

ブカブカの黒い全身タイツって感じだ。


「左の腕に付いてるボタンを押せ」


これか?左前腕の内側に、ごくわずかな出っ張りを感じたので触ってみると、音もなくアンダースーツが体にフィットした。体をひねってみるが、ほとんど違和感を感じない。


「すげーな。ウェットスーツみたいなもんなのか?」

「どんな体型でもばっちりフィットするぜ」


関心しながら、他の服を纏っていく。

ズボンに上着、ブーツも全て体にフィットしていくのに驚いた。


「最後はこれだ」


ロベルトにそう言われて受け取ったものは、バティやロベルトの左腕にも巻いてある、少し部厚めの光沢感のない筒状の布だった。


「これも腕に付けたらいいのか?」

「そうだ。これが一番大事だ」


ただの布にしか見えないが、ロベルトは勿体をつけて言ってきた。


「こいつで通信から制御、バイタルチェックまでやる優れものだぜ」


なんだかスゲーが、布で出来たスマホみたいな感じか?

俺が着けても意味なくないか?


「俺が使えるモンなのか?」

「付けときゃ位置情報がわかるだろ?」

「首輪みたいに?」

「いいや。救助するために」


最悪だな。俺も何か分からないものと戦う場所に行けってことか?


「俺は、戦うなんて無理だぞ」

「戦えなんて誰もいってねーよ。ただこっからは俺達と一緒じゃなきゃ移動できねえ。ここで待ってりゃ敵性体にブッ飛ばされる」

「………なるほど…ちゃんと守ってもらえるってことか」

「最大限の努力項目。指示にしたがってくれ」

「…」


はっきり言って付いていけない。ただわめいても何も変わらないって空気だけは感じる。


「装備がすんだらこっちだ」


バティに呼ばれてハンガーを歩いて近づいていくと


「紹介しておく。オーレとロベルトは分かったな」


俺が軽くうなずいて返すと


「こいつはペップだ」

「よろしく」


握手を求めて来る、オーレと同じくらいの身長のハゲた西欧風の顔つきの男だ。

握手を返しながら返事を返した。


「鈴木ユウイチだ」

「スズキだね」

「ユウイチ、もう出なければいけないが改めて、バティだ」


バティとも握手を交わしておく。何もできない俺は、出るといわれてもどうする事も出来ない。

戸惑いながら見つめると、バティが口を開いてくれた。


「ユウイチ、ペップはチームの技術屋だ。今回お前を”ティキ”に乗せて交戦予測地帯から下がってもらう」

「ティキ?」

「MFCという移動用マシンだね。”ティキ”は愛称だ」


俺の疑問にペップが答えてくれた。車だろうと中りを付けるが、少し安心だ。安全地帯に連れて行ってくれるらしい。本当に助かる。


「よろしくお願いします」

「急に丁寧だね」


ペップに少し怪訝な顔をされたが、守ってもらえるなら下手に出なきゃな。


「もう間もなくだ。オーレ、施設データの吸い出しは済んでるな?」

「完璧だ」

「ロベルト」

「いつでも出れる!」

「ペップ、ユウイチをエスコートしてやれ」

「わかってるよ」


「出るぞ!」


各々が返事をして走りだした。

俺は、付いていくしか出来なかった。




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