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落下

ご覧いただきありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

「うっおおおおぉおおおぉぉぉっおっおおお!??!!!?」


落ちる!落ちるっ!めっちゃ落ちるっ!

いったい何が起きてるんだ?わけが全然分からねぇっ!

ただ俺は道を歩いてただけなのに!


「どこだっ!ユウタ!ユウタ!どこだ?!ぐべえーっ!」


息子と一緒に!子供は!どこだっ?!


*


散歩をしてたんだ。

子供と一緒に。

ママの作った晩御飯を食べて。

一緒にお風呂に入る前に。

ちょっと家の周りを。

やっと歩けるようになった。

明日は休みで。

一緒にお出かけって。


*


そうだ!それでいつもの道で、パリパリ音のする黒い影が正面に!

いきなり出てきて!


「うーげぇーーー!!」


考えがまとまらねえ。わからねえ。なんだ?

どこまで落ちるんだ。

子供、子供、俺の息子はどうなった?

黒い影?が、いきなり。で、子供は。黒いのに吸い込まれそうになって!

そうだっ!後ろに付き飛ばしてっ!

そっから!

落ちたっ!


「ぐげげぇぇー」


吸い込まれたのに落ちるって何だ?

ユウタ!一緒に落ちてないのか?傍には…いないっ!

なんだ?どうしたらいい?


ほとんど動かない体をジタバタ動かして周りを何とか見回してみる。

とりあえず人影は見当たらない。

周りはいろんなものが歪みながら見える。

巨大なビル群。あれは星か?あれは何だ?遺跡?わからん。


子供はどこだ?落ちてないのか?家のすぐそばで、帰れたか?嫁ちゃん。どうなった?家に居るのか?どうなった?どれくらい時間が経ってる?


見た事もない生き物?虫?機械の塊?

必死で頭を回転させようとするが、まとまらない。

あたりは黒一色。歪みが走る。歪みながら見える。

砂漠?岩山?なんだ?鳥か?


「あああああ!!!もう…無理…くそ…」


わかんねぇ。どんだけ落ちてる?

風切り音は聞こえない。音は何もない。落ちる。怖ぇ。子供はどこだ?

ときおり周囲にスパークが走って見えるが、周りに壁は見えない。

怖ぇ。吐きそうだ。子供は?ジェットコースターはめっちゃ苦手なんだよ。


…ユウタぁ…ゴメ…目の前…白……



あたりはパイプやモニター、計器や配線が所せましと犇めきあうように詰め込まれた何かの研究施設の一室のようだった。壁や床は塗装もされていない金属製。モニターの電源は灯っておらず、まるで打ち捨てられたかのように静まり返った部屋だった。

その部屋の中心には一片3メートルほどの巨大な水槽のようなものが鎮座していた。

水槽の中は青色の液体で満たされ、端に何も繋がれていない配線類が漂っていた。


「Biiii!Biiii!Biiii!」


時が止まったかのようなその部屋の計器類が突然灯り、警告音が鳴り響き。

そして水槽の中に突然光が走り、輝きが治まると黒い楕円が現れた。


「ガボボボボボ?!ヴァンバ?ヴァニガブォコッヴァッ?」


み、水っ?!溺れる??

逃げっ!上はどっちだ?口に水が!


「ガバババッ?!ゴボッ!」


死っ死ぬ!


「?ガボッ?」


溺れねえ?息が出来てる?息してるわけじゃないのか?水じゃないのか?なんなんだ?視界が青い?どこだ?外は?くそっ!なんなんだ?


俺がわけもわからず、謎の液体の中で気がついてから、もう10分程たっただろうか?

ぶつけ所のない怒りが少しずつ、どうにかこうにかおさめる事が出来た。

辺りを見回す余裕が多少出てきたので、何とか現状を調べようと思ったが何も理解出来ない。

吸い込まれたら、落ちて、溺れたら、溺れなかった。

意味がわかんねえが、子どもは傍にいねえ。無事なのか?近くに居るのか?

視界が青っぽいな?青い水?の中にいるのか?2~3メートルくらいの水槽っぽい中にいる?

…ポイポイばっかりだな。

警報のような音が聞こえる。もしもーし!電話鳴ってますよー?早く出てくださーい!ちくしょう。鬱陶しいからマナーモードにしろよ。


天井は、完全に蓋されてるな。

なんだこのケーブル?天井から大量のケーブルが水の中に垂れ下がっている。

おお…このケーブル…先が針だ…こっちは…ドリル…

なんなんだよ?このケーブル引っ張ったら上の天井が外れたりしねえかな?


無理か…


水槽の外は、工場みたいな感じだな。モニターが着いてるのは見えるが、文字は読めないな。


30分か一時間か…時間の感覚がよくわからない。不安で不安でしょうがない。警報が液体ごしでも耳につく。

ここがどこで、子どもがどうなったのか?俺はどうなるのか?




また少し時間がたった…今の切実な悩みは…トイレだ。

俺は水の中に居るわけだが?ションベンしたらどうなるんだ?ユウタ、パパは心がへし折れそうだ。



時間の感覚が無い。

何もする事が無く良くない想像ばかりで吐きそうになる。不安で怖くて焦りが沸き上がる。



警報が止まった。

水槽の壁を意味もなくかきむしっていた俺の視界の向こうから、丸いライトが4つ見えた。

助け?

わからないがやっとこの状況から何かしらの変化が起こりそうだ。折れた心には刺激がありがたい。




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