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四百十一話 『鳥』

 数々の魔法が、俺とファミリスを狙って飛来してくる。

 しかし、この状況は予想済みだ。


「吶喊だ!」


 俺が乗馬を前へと勢い良く進ませ、ファミリスもその後に続く。

 飛来する魔法は、俺たちの速度によって目測を誤り、着弾位置がズレて地面に衝突する。

 この走る勢いのままに帝国の兵士へと突っ込もうとしたところで、帝国の陣営に動きがあった。

 俺の位置からでは、まだ帝国の陣営が遠い。そのため、何かが上空へと飛び上がったことだけが分かった。


「なんだ? 矢か?」


 俺は目線を上空へと向けて、そこで驚いた。

 蒼穹を遮るように、多数の鳥がいたのだ。

 いや、鳥じゃない。

 あれは偵察用の魔導具である、あの『鳥』だ。

 その数は、ぱっと見で百は越えている。


「あんな数を出して、なにを観る気なんだ?」


 俺が不可解な帝国の戦術に首を傾げていると、上空の『鳥』に動きが現れた。

 『鳥』は頭を下にして、急降下してくる。

 その行き先は、間違いなく俺とファミリス。


「投石や弓矢の代わりに、『鳥』を突っ込ませる気か!?」


 自分で放った言葉に、思わずなるほどと納得する。

 弓矢や投石では、俺とファミリスのような、人馬一体の神聖術を使う者の移動速度に対応しずらい。

 そこで、操作が可能な『鳥』を使って、的確に遠距離攻撃を当てようというのだろう。

 前世風に言うなら、リモコンで動かせる誘導弾って感じかな。


「ん? 『誘導弾』!?」


 頭に浮かんだ言葉と想像に、思わず背筋がゾッとした。

 『鳥』は魔導具だ。そして偵察用を誘導弾するからには、殺傷能力を上げる改造はしてしかるべきだ。


「ファミリス! もっと速度を上げるよ! 一気に帝国の兵士に近づく!」

「否はありませんが、そんなことをすれば後続からかなり離れてしまいますよ。そうしなければならない、その理由は?」

「あの『鳥』だ。あれはきっと、爆発する!」


 俺は言いながら、乗馬を限界まで加速させる。俺が何を脅威に思っているか伝わったのだろう、ファミリスも追従してくる。

 俺たちの動きが変わったからだろう、上空の『鳥』たちの落下速度が増した。どうやら俺たちが帝国の兵士に辿り着く前に、どうにか体当たりしようとしているようだ。

 その急落で、きっと『鳥』を操る者たちの技量を越えた速度に至ったんだろう。俺たちから少し狙いがはずれた場所に『鳥』が落下してきた。

 『鳥』は次々と地面に衝突し、その直後、大きく爆発した。


「火球の魔法を組み込んだにしては爆発が大きい!?」


 予想以上の威力に、俺は自分の顔色が青くなる感じを得ていた。

 しかし、ここで馬の手綱を緩めることはできない。もし緩めてしまえば、こちらを狙って落下する『鳥』の絨毯爆撃にやられてしまう。


「むしろ、これぐらいに大威力でよかった。帝国の兵士の内に入れば、上空を気にする必要がなくなる!」


 俺がこうも状況を口に出しているのは、自分の恐怖を紛らわせるためもあるけど、ファミリスに状況を伝えるためでもある。

 俺の意図をくみ取ってくれて、ファミリスは俺の前へとネロテオラを進ませる。そして、帝国の陣営に突っ込む穂先の役割を担ってくれた。


「突っ込みますよ。遅れずについてきなさい」


 ファミリスが駆るネロテオラは、騎士国産の中ですら、かなりの名馬だ。だから俺の乗馬は限界ギリギリの速度にも関わらず、更なる加速を叩き出す。

 そしてネロテオラが風よけになってくれるお陰で、俺の乗馬も限界の先へ加速することができるようになる。

 そんな高速移動を行う俺たちの後ろでは、地面に落下した『鳥』が爆発する音が連続している。

 どうやら本格的に俺たちの移動速度に、帝国側が対応できなくなったようだ。

 その事実に安心するが、間もなく帝国の陣営に突っ込むことになるので、俺は気を引き締め直すことにした。


「突っ込みます! 以後はどのように?」

「敵陣の中で戦うんだ! 下手に帝国の兵士がいない場所に出たら、上空の『鳥』で狙撃爆破される!」


 方針と説明を行っている間に、ファミリスが帝国の兵士へと突っ込んでいた。

 ネロテオラが鼻先を地面すれすれに置くように頭を下げて突撃したことで、ネロテオラの頭や体に撥ねられて帝国の兵士が次々と吹っ飛んでいく。

 この勢いのまま帝国の陣営の中央まで突き進んだところで、『鳥』が爆発する音が止んだ。

 どうやら俺が睨んだ通り、ロッチャ兵を魔法の餌食にすることは出来ても、帝国の兵士を『鳥』で爆殺することは出来ないらしい。

 しかし遠距離攻撃がなくなった代わりに、俺とファミリスの周りでは、大勢の帝国の兵士が武器を手に気炎を上げている。


「あれはミリモスだ! 敵の総大将! 討ち取れば、褒賞第一位だ!」

「抜剣! 馬を狙え! 地面に引きずり降ろせ!」

「一人でかかるな! 多数で当たれ!」


 ファミリスの突撃を食らったのに、混乱がないのは素直にすごいと思う。

 感心はするけど、俺だってやられるために、帝国の兵士たちの中に来たわけじゃない。


「見抜いてくれたように、俺はミリモス・ノネッテだ! さあ、誰が相手してくれるんだ!」


 上空の『鳥』を寄せ付けないために、逆に帝国の兵士を呼び寄せないといけないからこその声掛け。

 だけど、危険を回避するために別の危険に飛び込んでいる状況なので、余り喜ばしくはない 

 ともあれ、敵意剥き出しの目でみてくる帝国の兵士を相手に、生き延びることだけ考えることにしよう。

 幸い、近くにファミリスという強い騎士がいるのだから、生き延びるだけなら簡単なはずだしね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ファンネルミサイルの話ずっとスルーされてましたけど、まさか主人公聞いてなかったんかい
[良い点] 楽しく読んでいます。 [一言] 更新ご苦労さまです♪☆♬ 執筆お疲れ様です♪☆♬
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