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四百話 新たなる報せ

 ノネッテ本国が陥落した報告をしてくれた出自が怪しげな伝令は、休養を一日取ってから、俺たちから離脱する旨を伝えてきた。

 俺が申し出を了承すると、伝令はどこかへと立ち去っていった。

 詳しくどこへ行くかは判明していないたものの、向かった先は帝国の領土がある方向だという。

 しかしこの事実だけじゃ、あの伝令が、俺が睨んだ通りに帝国からの間者だったのか、本当にノネッテ本国からの伝令だったのかは判明しない。


「彼のことを、気にしても仕方がないよね」


 間者や本物の伝令だったとしても、今後あの伝令と俺は出合わない予感があるし。

 さて休憩が終わったところで、騎士国の領土から帝国の影響を排除する仕事を再開しよう。

 領土の境は、地図上ではすぐそこだ。

 とりあえず、そこまで帝国の軍勢や影響を排除出来たら、一段落つくことができる。

 俺はノネッテ合州国の軍隊を指揮し、次の目標地点へと進軍することにした。



 もう少しでひと段落つくことが出来る。

 そう思っていたのだけど、そうは問屋が卸さない事態が発生していた。

 それも二つも

 

 一つは帝国の領土の際に大部隊が待ち構えていて、俺が先行させていた騎士国の騎士が帝国領土に入らないように防衛していたこと。

 ノネッテ合州国の軍隊が進軍する勢いを利用して、あわよくば帝国の領土を掠め取ろうと思っていたのだけど、そう上手くはいかないらしい。


 もう一つは、俺の元にもたらされた急報についてだ。

 急報を持ってきたのは、カヴァロ州からやってきたという伝令。

 先の出自不明の伝令の件もあって警戒したのだけど、今回の伝令はカヴァロ州の領主の手紙を持ってきていた。

 その手紙の主は正確に言えば領主ではなく、領主の妻であり俺の実姉でもある、ソレリーナ・アナローギからのものだった。

 最初、俺は手紙を受け取った際、ノネッテ本国が帝国に占領された事を、ソレリーナが伝えようとして来たんだと思っていた。

 手紙を開いて中を見てみれば、俺の損な予想とは斜め上の文章が並んでいた。

 内容は、挨拶や装飾を抜けば、こんな感じになる。


『帝国がノネッテ本国と他三州を奪い取ったから、カヴァロ州も独自に軍を動かして、帝国領を切り取ってやった。もっと領土を切り取る気でいるから、ある程度の軍を寄越して欲しい』


 こんな手紙を貰ったら、苦笑いするしかないだろう。


「ソレリーナ姉上。好きな人と結婚するために王家を出奔したぐらいの自由人なのは知っていたけど、今回ばかりは無理しすぎだろ」


 俺は呆れつつも、ソレリーナの手腕に感嘆してもいた。


 現状、帝国は自国の軍隊の多くを、騎士国に面する地域の境、ノネッテ本国と他三州の制圧に使っている。

 ということはつまり、自由に動かせる戦力が乏しい状態ということだ。

 そしてソレリーナは帝国の動かせる戦力が少ないと分かったからこそ、カヴァロ州の兵士を使って接する帝国領へ進出して土地を持ち取ることにしたんだろう。

 かなり危ない賭けといえるけど、その目論見は見事に成功しているあたり、出奔しなければノネッテ国の次期王はソレリーナだったと言われるほどに才覚者だな。


「って、感心している場合じゃないな」 


 俺は抽出できる兵力を勘案して、手元にある騎馬部隊を全てソレリーナに預けることにした。

 もう少しすれば、帝国の軍勢を帝国領へと追い払った騎士国の騎士たちと合流できる。騎馬部隊の役割は、その騎士たちに担ってもらえば、穴は埋められる。

 それに帝国の軍隊の主力は魔法戦だ。

 並みの騎馬部隊じゃ、遠間から魔法を撃たれて壊滅させられてしまう恐れがある。

 対帝国を考えると、騎馬部隊はお荷物と言える。

 そのお荷物を他所で有効活用しようというのだから、戦力の有効活用といえる。

 それに騎馬部隊は移動の足が速い。送る援軍としては、この移動力の速さこそが、一番有用な点だ。

 帝国が奪われた土地を取り戻そうとするより先に、援軍の騎馬部隊が到着すれば、奪い返される可能性はより低くなるんだしね。


「そうだ。騎馬部隊にはカヴァロ州に到着する前にペイデン州に寄ってもらって、ペイデン州からも兵力を出してもらうことにしよう」


 騎馬部隊とペイデン州の兵が援軍に行けば、帝国は土地を奪還するために多くの兵力を集める必要がある。

 一番集めやすい兵力は、騎士国との国境に布陣している部隊だ。

 もし仮に、考えなしに国境の兵を集めるのなら、少なくなった国境の兵力を突き破るべくノネッテ合州国の軍隊を動かすことができるようになる。

 帝国が遠くから兵力を集めようとしたり、土地を奪い返そうとしてこなければ、その土地を実効支配することができる。

 つまるところ、ノネッテ合州国側が有利になる状況を作ることが出来る。


「ここまで考えて、ソレリーナ姉上は行動したのかな?」


 ソレリーナの思惑がどこにあるかは分からないけど、とりあえず、この流れに乗るべきだろう。

 上手くすれば、ノネッテ本国や他三州を取られた分以上の土地を、帝国から分捕れる可能性もなきにしもあらずだしね。



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