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三百七十三話 騎士国との戦争への準備へ

 騎士国は三年連続で帝国と戦争していたから、間違いなく戦力も物資も疲弊している。

 だから俺は、騎士国が宣言を出してきた後も、ノネッテ合州国と戦争を起こすのは一年後であれば良いな、なんて希望的観測を抱いていた。

 まあ、そう甘い相手じゃないってことを、すぐに思い知らされることになったけどね。


「騎士国から使者がノネッテ本国にやって来て、フッテーロ王に宣戦布告を行ったって?」


 騎士国から布告があってから百日後、本国からの予想外の知らせに、俺は目を丸する。

 報せを持ってきた本国からの使者は、青い顔で報告の続きを喋っていく。


「つい三日前のことです。突如、白馬に乗った騎士が王城の前に現れ、騎士国の騎士と名乗り、王との面会を求めてきたのです。フッテーロ王は最初、先の宣言に対する説明をしてくるものだと思っていたようなのですが……」

「面会してみたところ、いきなり宣戦布告をされたわけか」

「騎士の態度は問答無用な感じでして、フッテーロ王が理由を問いただす間もなく、布告書を一方的に手渡した後ですぐに去っていってしまい……」


 なんとも乱暴な宣戦布告だな。

 その取り付く島のない様子は、ファミリスの強引さに通じるものがあるので、お国柄だと思えなくはないけどね。


「いやまて。布告が終わっているってことは、もう既に騎士国とノネッテ合州国とは戦争状態になっているってこと?」

「それがその。騎士国は奇襲を良しとしないと、我が国に対して準備期間を設けていただきまして。ノネッテ合州国全土に報せを伝える日にちも含めて三十日間です」

「そんなに多くの日数、戦争の準備をする時間をくれたのか?」


 信じられない内容に、俺は眉を寄せる。

 普通、宣戦布告をしたら、すぐに戦争を仕掛けることが定石だ。

 敵の準備が整う前に攻め入れば、無用な被害を出す前に、大戦果を得ることが可能だからだ。

 だから、今回の騎士国が行ったような、よーいドンで戦争をしようという取り決めは、この世界の常識に当てはめて考えると異常と言える。

 いやまあ、正々堂々と戦争しようという表明だと考えれば、『正しさ』を信奉する騎士国らしいといえば、らしいと言えなくもないけどね。


「なんにせよ、戦争の準備をする時間があるのは助かる」


 新型魔導鎧は、箱型も四腕も量産体制が整ったばかり。

 いまはまだ、先行量産したそれぞれ十着ほどを着まわして、兵士たちに習熟訓練を行わせている段階。

 戦力を拡充するためには、新型魔導鎧を可能な限り増産することが必須な状態といえる。


「三十日間――いや、報せに数日、戦場へ移動する日数を考えると、二十日ほどしか猶予はないか……」


 意外と時間がない。

 これは、各方面から人員をかき集めてでも、新型魔導鎧の増産をしなきゃ、戦争までに配備が間に合わなくなるな。

 正直言えば、魔導具や鍛冶の生産活動に支障が出るから、あまりやりたくはない方法なんだけどね。


「とはいえ、戦争に負けてしまっては、それこそ意味がないからなぁ……」


 鍛冶の方はまだしもだ。

 魔導具の製造に関しては、騎士国が戦争でノネッテ合州国に勝利した場合、全面的に禁止になるだろう。

 つまり、魔導具の製造販売の分野は、戦争に負けた時点で閉業だ。

 そうなってしまえば、経済の支障なんて目じゃないほどに、経済と民の暮らしに打撃が入ってしまうわけだしね。


 ちゃんと事前説明はする気でいるけど、半ば作業員の石を無視する形であってでも、強引にでも増産作業に人を確保しないといけない。

 それでも、二十日間でどれだけの数を揃えることが出来るだろうか。

 俺は戦争の行く末に暗雲が現れたことを感じながら、増産作業に追加人員を招集する予算を組み、人を無理矢理にでも集める権限を適当な人物に与えないといけない。

 俺が説明と招集を行うことが出来ればいいのだけど、俺は俺で戦争に使う物資や武器、兵士たちの編成などなどに手を付けないといけない。

 それこそ、誰でも可能といえる増産作業に人を集めたりとか作業員へ対する説明なら、他に任せてしまわないと俺の作業量がパンクしてしまうだろう。

 そういった諸々の事に頭を悩ませながら書類を作成していると、執務室に伝令が駆け入ってきた。


「ミリモス様! 帝国から、フンセロイア一等執政官殿が!」


 一難も去っていないうちに、また一難の登場か。

 フンセロイアの用件は、予想する間でもなく、ノネッテ合州国と騎士国の戦争についてだろう。

 それにしても、ついさっき俺が知ったばかりだというのに、どうして距離が離れている帝国の執政官が戦争の情報を知っているのか――いや、理由は考えるだけ無駄なことだな。

 俺は書類を書き終えると、文官の一人を呼び寄せると、その書類と共に新型魔導鎧を増産するための人員確保の責任者を任じる辞令を渡した。


「私が、責任者!?」

「他所に助けを求めてもいいから、気楽にやってくれ。ただし、作業員は可能な限り最大限集めてくれよ」


 俺は絶望顔の文官の肩を叩いてから、フンセロイアと面会する場所へ向かうことにした。フンセロイア到着の報せをしてきてくれた伝令は、そのままフンセロイアの案内へと向かわせる。

 通常時なら、このまま執務室で会うのもいいけど、今は戦争と聞いた人たちで慌ただしくなっている。

 落ち着いて話をするためには、玉座の間で面会する方がいいと判断しての選択だった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 騎士国ってもはや「正しい」じゃなくて「正義」を標榜する国家になってないですかねこれ。 正しさがもはや失われてて、かつて正義に目覚めた騎士達を追放してきた事に関してはどう決着するんだろうねコレ…
[一言] 独善国家騎士国 中小国家がいるころには国力である程度ごり押し出来たし。調整役として役には立ってたんだろうけど 新王に変わったので傲慢な部分だけが出てきておる。 正直10年は王が替わるのが早か…
[一言] 誤字報告 >ちゃんと事前説明はする気でいるけど、半ば作業員の石を無視する形であってでも、強引にでも増産作業に人を確保しないといけない。 ✕石 → 〇意思
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