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三百二話 戦争の後詰め

 カルペルタル国についての話し合いが終わってすぐに、騎士王と騎士国の人たちはカルペルタル国の王城を去っていった。

 カルペルタル国の国土を半分に線引きしたうち、ノネッテ国の取り分の側に、この王城が入っているからだ。

 たぶんだけど、騎士王はさておいて、騎士国の人たちは布告しに回るんだろうな。この土地は騎士国に編入されることになったって。


 一方で俺の方はというと、こちらも統治作業をしなければならない。

 まあ幸いなことに、南には新たなノネッテ国の領土となった、元フラグリ国がある。

 そことカルペルタル国の国土の南側で、統治作業を共同してしまえばいい。

 詳しいことは、新領地を押し付ける予定の、アコフォーニャ地域の領主に丸投げでもいいしね。


 なにはともあれ、これで一連の戦争は一段落だ。

 と、気を抜きそうになったけど、それは少し早合点だった。

 エン国のことが残っていたからな。


 少し時間をかけ、手に入れたカルペルタル国の国土の統治作業の方向性が定まったところで、後のことはアコフォーニャ地域の領主に任せて、俺はエン国との会談へ向かうことにした。



 エン国の王との会談は、すんなりと実現することになった。


「やあやあ、ミリモス王子。調子はどうかね」


 現れたエン国の王は、四十歳ぐらいの男性で、髭面の四角い顔に満面の笑みを浮かべた、体格がほどほどに良い人物だった。

 笑顔なのは、俺を歓迎しているという点と、ピシ国を手に入れて国土が広がった嬉しさからだろうな。


「初めまして、エン国の王。初対面ということで、先ずは世間話に花を咲かせたいところですが」

「はははっ。要らんよ。男同士で長々と顔を付き合わせたところで、得る者は少ないだろうからね」


 人の好さそうな態度のエン国の王だけど、どことなく演技っぽい。

 小心から来る演技ではなく、俺に不快感を抱かせないためのもののような感じがある。

 ピシ国と本格的な戦争を起こすことで、コル国の行動を操作してみせた人物だ。二重三重に猫を被って本心を相手に探らせないことは、お手の物なのかもしれない。

 

 俺は気を引き締めて、この会談に挑みなおすことにした。


「ではまず、お互いの立場を明確にしておきませんか?」

「立場とは?」

「エン国は、ノネッテ国と友好的な関係を望むかどうかです」


 俺が切り出した話題に対し、エン国の王の笑顔が二割減になった。


「ノネッテ国に従わないのなら、エン国を滅ぼすとでも?」

「いえいえ。ただノネッテ国の国策として、小国を併呑し、さらに大きな国になることを予定しているので」

「友好的であるなら同盟国として残し、敵対するのならば攻め落として飲み込む。では中立では?」

「周りの国々がノネッテ国の領地と化した後に、中立を保っていられますか?」


 問いかけ返すと、エン国王の笑顔はいよいよ口元に残るだけとなった。


「いまのノネッテ国は、短い期間に何度も戦争を行った。現在、我らと戦うだけの余力がないのでは?」

「そう思うのなら、試してみては?」

「威勢の良いことを言っておられるが、口は災いの元となり得るが?」

「いま貴方が戦争を決意したとしても、俺一人だけなら、エン国から簡単に逃げることができますからね」


 さあどうすると言外に問いかけると、エン国王はとうとう真剣な顔つきになる。


「問わせてもらう。いまノネッテ国に下れば、我らの処遇は如何なるものに?」

「王という肩書が、ノネッテ国の領主へと変わるだけですよ。詳しく言えば、領地は現時点で保有しているもの――貴方ならエン国とピシ国の土地全てですね。領地の税金も、領主として貴方が設定したままで構いません」

「後に下った場合は?」

「さあ? その時にならなければわかりませんね。でも、友好国であれば、特に何をするわけでもないと思いますよ」

「敵対した場合は?」

「実例がすでに何個も、身近にありますよね?」


 俺の回答を受けて、エン国王は苦悩の表情を見せた後に苦笑いめいた顔つきになる。


「とりあえずは、エン国は中立であることを表明しよう」

「とりあえず、ですか?」

「いま我が国は、ピシ国を攻め獲って人気が沸いている。その状況で、いきなりノネッテ国に下ると言っては、熱狂が反感に変わることは目に見えている」

「国内情勢を鑑みて、以後のエン国の方針を決めると受け取りますが、構いませんか?」

「そう考えてくれていい」


 理由に納得はできるけど、時間を置けばどうなるというわけじゃないと思うんだけどなぁ。

 まあいいか。考えようによっては、エン国以西の小国からのクッションとして、エン国を使う目は残るし。

 それに、エン国はフォンステ地域と接するようになるんだ。砂漠から来る貿易品を用いて、交易で稼がせてもらえばいいしね。


「それでは、今後の両国の関係が、平和なものとして続くよう願っています」

「こちらも、気持ちは同じですとも」


 笑顔に戻ったエン国王と握手をして、俺はエン国の王城から去ることにした。

 これにて、本当に今回の戦争は終わりを迎えた。

 さあ、ルーナッド地域にある自分の城に帰ることにしよう。


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