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二百八十六話 情勢は移り行く

 フラグリ国の王城を落としたけど、これでフラグリ国の制圧が終わったわけじゃない。

 俺は王城での戦闘後、すぐにフラグリ国全土に向けて伝令を走らせ、宣言を行った。


『フラグリ国はアコフォーニャ地域へ編入とする。この地に住む貴族や豪族は、アコフォーニャ地域の領主の配下となる。そのため、持ちうるすべての権利権限を、一度アコフォーニャ地域の領主に返還すること』


 この俺の宣言に、フラグリ国の貴族や豪族に大商人たちは驚いたらしい。


 いままで俺は、支配した地域の貴族や豪族などの権利を、ほぼ戦争以前と同じに保証していた。

 しかし今回は、その権利を一時的にすべて取り上げるとしたわけだ。

 これで不満が出ないはずがない。



 案の定、フラグリ国の貴族の十数家が決起し、戦いを挑んできた。

 貴族の戦力は、その家の私兵が主力。国軍より数は少ないものの、農民兵とは実力が上の猛者ぞろいで手強い相手だ。

 俺はノネッテ国の軍でもって、そんな決起貴族たちと戦った。


「兵が強力とはいっても、それは全ての兵力が協力し合ってこそ、だけどね」


 戦いになる状況を見越していた俺は、あらかじめ密偵を決起貴族たちの下に潜りこませていた。

 密偵たちの報告では、貴族間での連携は上手くいっていないらしい。

 自分の権利を守ろうとして、武力行使を選んだ貴族たち。だからこそ、この戦いの中でも誰が上位命令者かで言い争いがあり、そのことが配下の私兵にまで伝わり、貴族軍の空気はギスギスとしたものらしい。

 物資はそれぞれの貴族が用意したらしく、食事の程度も貴族の配下によってまちまち。飯の良し悪しが切っ掛けで、私兵同士で喧嘩沙汰もあったというのだから、始末に負えない。


 そんな、互いの信用もない間柄だ、戦いになっても連携はガタガタだった。

 こちらの弓兵隊が矢を降らせれば、決起貴族の私兵たちはお前が先に行けと互いに押し合う。

 こちらの槍歩兵が攻撃すれば、私兵たちは死にたくないからとジリジリと下がる。

 こちらが軽騎兵で追い回すと、私兵は隊列を崩して逃げ回る。

 そのあまりの腰抜けっぷりに、俺は思わず、なにかの策略が働いているんじゃないかと疑うほどだ。


 ともあれ、私兵を打ち倒し、決起貴族たちは家族を含めて全員殺害ないしは捕縛した。

 彼らに判決を言い渡す段階に移行したのだけど、貴族たちは生き残ろうと必死に媚びを売ってくる。


「全ての土地や資産を差し出します。だから命ばかりは!」

「上位貴族の招集を拒否できなかったのです! 悪いのは上位貴族です!」

「我が家は娘をお送りいたします。ミリモス王子がどう扱おうと構いませんわ! だから!」


 彼らの言い分に、俺は閉口したくなる。

 でも、俺が言葉を出さなければ、彼ら彼女らが主張を聞き続ける羽目になる。

 それは勘弁だ。


「お前らの未来は決定している。決起した貴族家、その当主およびその配偶者は全て死罪。その他の者は、ノネッテ国から永久追放だ。そして財産と土地は接収し、家に仕えていた使用人に退職金として渡す」

「そ、そんな! お待ちください!」

「待たない。沙汰は下された。連れて行け」


 俺は兵に命じて、貴族たちを連れて行かせる。

 この後すぐに、貴族の当主と、その妻や側室や愛人たちは、連座での死刑が執行されることになっている。

 追放する者たちについてだけど、希望する国があるのならそちらに向かわせるが、宛てや希望がない者たちにはカルペルタル国に送る手筈になっている。


 なぜカルペルタル国に送るかだけど、それには理由がある。

 カルペルタル国は新たな小国連合の一員だ。俺が追放した貴族の生き残りたちを内に抱えたとき、どのような反応をするか観察して、後の国対政策に生かしたい。

 別の思惑としては、貴族の生き残りたちがカルペルタル国を通過し、騎士国に逃げ延びる目を作るため。

 こちらも、騎士国の反応を見るためだ。


「テピルツ国も、フラグリ国と同じように、支配後はルーナッド地域の下に編入になる。この決定を聞いて、他の国はどう反応するかな?」


 俺が小国たちの動きを予想しながら待っていると、情報が入ってきた。


 プネラ国では、前王を殺して立った新王が、こちらに戦線布告してきた。

 国境近くに、ノネッテ国の軍隊が二つ展開していることを受けて、配下から突き上げを食らい、それに反発しての突発的な行動のようだ。

 しかも小狡いことに、ノネッテ国の軍隊が展開している場所を避けるように、プネラ国の軍隊はフォンステ地域に向かって進軍をしているらしい。

 フォンステ地域に、この情報は伝わっているだろうし、十分な兵力はあるから、問題ないだろう。

 しかしながら、ドゥルバ将軍とルーナッド地域に展開している軍隊を無視して、別方向に進軍するなんて、プネラ国の新王は馬鹿なのだろうか。

 宣戦布告を受けたので侵攻の大義名分が出来たし、国土の守りが少なくなったことも合わさって、王城まで容易く突破できるぞ。

 何らかの罠かもしれないけど、とりあえずドゥルバ将軍に、プネラ国を攻め落とすように指令を出しておくことにした。


 コル国とピシ国では、離散して減った人口を確保するため、お互いの国に戦争を仕掛けることにしたようだ。

 なんでも、逃げた民が向かった先がフォンステ地域――つまりはノネッテ国であるため、逃げた民の返還を諦めたことが切っ掛けらしい。

 戦争を始めた両国だったが、そこにエン国が参加した。

 エン国の目的は、コル国とピシ国を支配下に置き、砂漠の通商路からの品々をフォンステ地域から直接手に入れられるようにするためだという。

 そうして、コル国、ピシ国、エン国は、三つ巴の戦に発展した。


 グラバ国は、攻め落とされたフラグリ国とテピルツ国が、他の地域に編入されたことを見て、すぐに白旗を上げた。

 グラバ国の国主が、直接ノネッテ国の本国に向かい、チョレックス王に面会し、支配下に入りたいと申し出たのだ。

 その願いは受け入れられ、プネラ国が宣戦布告をする前後の頃には、すでにグラバ地域へと名称が変更となっていたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] やり口がどんどん帝国じみてきて、主人公の好感度がさがりっぱなし(-_-;)。 作者さんの頭の中では流れができてて、理屈は通ってるんだろうが(^_^;)。<帝国に攻められない為…という免罪符…
[一言] 地図を見直したら騎士国と魔道帝国の規模が圧倒的すぎて話にならない笑 ロシアと台湾レベル以上に国土の差が広すぎる
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