作戦の変更
通信機が反応する。画面を確認するとそれは下田さんからの命令だった。
「プランBへ変更!作戦開始地点へ急遽移動する!」
今にも突撃する用意をしていた特殊機動部隊はその命令で移動を開始する。先程の移動とは違い、全力疾走による移動だ。途中第2部隊の最前線部隊、剣や近距離用銃火器で武装した者達とすれ違う。名畑さんにもしっかり伝わってるみたいだな。
素早く壁の側面へとまわる。やがて裏門からも戦闘音が聞こえ始めた。さて、ここからは俺の出番だな。2つの宝石を取り出す。片方を壁の前に置き、片方は持ったまま能力を発動させる。俺の能力は「透過する能力」。その能力で壁をすり抜け壁の向こうにも同じように宝石を置いて魔力を通す。すると宝石が少し光った後、宝石と宝石に挟まれた壁に人が通れる穴が空いた。
「話は聞いてたけど凄いなこれ。」
「魔法研究所様々ですね。」
使用したのは宝石と宝石の間にあるものに穴を開ける宝石だ。どういう構造なのか全くわからないが土属性魔法が付与してあるとは聞いている。適正属性関係なしに魔力さえ通せば発動できるは便利だな。まぁ穴を開けるためには宝石で挟まなきゃ行けないってところは使いずらいけどな。
「よし!これから敵司令官の元を目指す!行くぞ!」
「「「了解!」」」
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「上手く動けてるみたいだな。」
基地の中でも最も見晴らしのいい部屋から正門、裏門、そして穴の空いた壁を目視で確認する。正門、裏門共に陽動の目的をしっかり果たしている。これなら特殊機動部隊の方も動きやすいだろう。急な作戦の変更にもついてこれるということはとりあえず連携は合格だな。まぁ今回に関しては元かプランAで行けると思ってなかった説もあるけどな。A雑だったもんな。しょうがないじゃん?時間ないんだもん。まぁ弱音吐いたところで変わらないか。はぁ...さてと働きますかね。
俺も作戦通りの地点へと向かう。残りは結果を見て判断すれば十分だろう。
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「副部隊長!敵に報告にあった下田さんの分隊員が!」
「なるほどあれがレジスタンスでトップ3に入ると噂されている下田さんの分隊員か。なるほどさすがと言うしかないか。」
身体強化魔法がある分我が第2部隊の近接班の方が動きがはやいはずなのだが...まさか動きについてくるどころかたった二人で圧倒しているとは。刀を携えた女性と体の周りにナイフのようなものが飛び回っている男性、あれが報告にあった真田理恵と青岩斗真か。となると真田の方がついてくるのは分かるが...あの宿す能力だったか、かなり面倒だな。射程は長くないようだが意思を持ったナイフが縦横無尽に飛び回っていて接近できないし、銃弾からの防御も完璧か。部隊長なら何とかなったかもしれんがいないもんは仕方ないな。
「生命の維持を最優先!特殊機動部隊が作戦を完了するまで戦線を持たせろ!」
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さてともうそろそろここに特殊機動部隊が到着するはずだが...。俺は開けた穴から司令室へと向かう最短ルートで通る廊下に仁王立ちしていた。
「准尉殿。本当に敵はここを通ると?」
「あぁ動きからして相手はしっかり下調べをしているのだろう。となると最短ルートを通る可能性が高いな。引き付けているうちにさっさと頭を取りたいって考えだろうしな。」
「なるほど。さすが准尉殿です。」
目撃者が必要だし大尉から多少兵を借りたのだが...やっぱこういうの慣れないなぁ。さっさと来てくれよ...。
「准尉殿!現れました!」
おっようやくか。
「迎撃だ!弾幕を貼れ!」
よく訓練された兵士だな。命令をすると全員直ぐに射撃を開始した。実戦経験なんてないだろうに物怖じせずに正確に射撃を行っている。敵兵が末端まで全てこれだと言うなら恐ろしかったがまぁ割と精鋭をつけてもらった感じなのでそこは少しだけ安堵する。
仁王立ちを続けたまま特殊機動部隊の動きを確認する。いくら正面からわかりやすく射撃されてるとはいえ能力も使わずに銃弾なんて足止めにもならんと言わんばかりに避けたり弾いたりしている。特殊機動部隊って空が鍛えてるんだっけ?どんな鍛え方したんだよこれ。文句なしか。
「准尉殿!銃撃が意味を為しません!如何致しますか!?」
「あぁそうだな。邪魔だから下がってろ俺がやる。」
「しかし准尉!それはいくらなんでも」
「なんだ?俺があんなのに負けるとでも?」
思いっきり兵士を睨みつける。兵士はガダガダと震え首をブンブン振った。いや...そうなるように威圧したとはいえなんか...ごめんな?心の中で謝るが顔では睨みつけたまま兵士を下げ特殊機動部隊と対峙する。
「なんだぁ?俺ら相手にたった一人で勝てると思ってんのかぁ?舐められたもんだなぁ。」
...うわぁ演技派だなぁ...。俺がそうしろって指示したんだけど分かっててもなんかムカついたもん。
「お前らこそあまり舐めるなよ?俺は准尉だ!そこら辺の兵士と一緒にされちゃ困るな!」
腰に付けていたM9mcとガンブレードを抜いて特殊機動部隊に斬り掛かる。一対多だがここは狭い廊下だ。所詮1度にかかってこれる数に限りがある。それに俺はこういうところの戦いの方が得意だからな。能力を3倍まで解放する。神島さんとの戦いでは身体強化魔法だよりの戦い方をしたが軍では俺は魔法は使えないが能力は使えるということになっている。となると能力に頼るしかない。まぁ能力は調べた結果が国に情報としてあるからな。一切隠す必要が無いのは都合がいい。身体リミット解放。地面から体を離し壁や天井を使い立体機動を行いつつ弾幕と斬撃で牽制し、蹴りで一人一人無力化するように後方へと蹴り飛ばす。味方を蹴るのは少し胸が痛むが一切当てないのは疑われる結果に終わるので心を鬼にして攻撃を続ける。ちらっと連れてきた兵士の方を見ると戦いの様子に唖然としているものがいたり、「おぉ!」と聞こえそうな感じに拳をにぎりしめるものがいたりと様子は様々だったが力をアピールするのは成功といった所だろう。まぁ様子を見た限りじゃ恐れられるのか尊敬されるのか判断しかねるけどな。
だいたい半分ほど後方へと取り飛ばしたところで「撤退だ!撤退!」という声とともに特殊機動部隊は踵を返し全力で逃走し始めた。俺はガンブレードと銃をしまい連れてきた兵士に一言声をかける。
「あとは任せた。俺は司令官の所に行く。もう俺の力は必要ないだろう。」
「ですがあやつらを仕留めるには准尉殿のお力を」
「なんだ?まだ俺の手をわずらわせると?手負いの敵すら仕留められぬ無能の集団なのか?」
また睨みつける。あぁあこれは恐れられるだろうなぁ...。まぁでもあれ以上俺がやる訳にもいかないしな。兵士たちはみな震え上がったのか俺の目を見たあと1歩後ずさり特殊機動部隊を追って行った。
大きく溜息をつきとりあえず俺の仕事が終わったことをひとまず安堵する。
さてと...司令室に行くとするか。戦況は一体どうなってることやら。
To be continuous...
どうも!クロウです( 'ω')このまま行けば今回の作戦は残り1、2話で終わりそうです。何も無ければいいんですけどねぇ。さてどうしたものか。まぁ来週中には大地の作戦は終了することでしょう。ほぼ目的は達成しましたが次回はどうなるのかお楽しみに!