組織
厄介な仕事を任され肩を落としつつも先程使った装備のメンテナンスのために部屋を移動する。
「よぉオヤジ来たぞぉ...。」
「おう来たかってどうした?大分気を落としてるな?」
ここはレジスタンスの魔法武具研究所。正直イメージ的には鍛冶屋の方が近い。ここでレジスタンスの装備は用意される。軍の最新装備にも負けない技術力を誇っている。そしてこの技術力をレジスタンスが持てた理由がオヤジ、大澤 藤一郎の加入だ。元々異端の鍛治職人で高い技術力を誇っていたのにも関わらず軍にも従おうとせず己の信念に従ってのみ鉄を打ってきたらしい。まさに鍛冶屋って感じがするのだが軍にも従わないとのことで異端とされ、正直もう少し長く表で鍛冶をしてれば反逆罪として捕まっていてもおかしくなかったんじゃないかと俺は思っている。聞いた話だと神島さんが直接交渉しに行って仲間になってもらったとか。確か八葉さんとかも同じ感じだったかな。ちなみにだがオヤジと呼んでいるのは本人がオヤジという呼び方に強い愛着を持っていてそう呼ぶように求められたからだ。
「あっまさか龍司にコテンパンにやられたんだな!」
「なっ!?」
「ハッハッハ!図星か!」
「なんでそれを...。」
「いやぁ模擬戦やるって話は聞いたからな。」
「会議終わってすぐやったのに話が駆け巡るのはやいな...。」
「そりゃなんたってうちはまだまだ人がすくねぇからな!まぁ俺んとこには世間話が集まりやすいってのもあるけどな!」
「はぁ...じゃぁ用件も分かるだろ?」
「もちろんだ。さぁ見せてみなあと感想の方もちゃんと聞かせてもらうぜ。」
「ハイハイ。」
オヤジの前にガンブレードとM9mcを出す。オヤジはそれを受け取って少し振ってみたり分解し始めて中を見たりし始めた。
「こりゃぁだいぶ派手にやったな。」
「分かるか?」
「そりゃぁ分かるぜ。俺は元々鍛冶だぞ?武器を見りゃ分かる。いやこいつを見て分からない方がおかしいけどな。」
そう言ってM9mcの方を見せてニヤリと笑う。もう付き合い長くなっているからこそ分かるが少し怒気をはらんでいることに気づく。
「悪かったって乱暴な使い方して。」
「いいんだいいんだ相手が相手だしな。俺の仕事はこいつをそんな使用に耐えられるよう、そんな使用に向いているように改造してやる事だからな。」
「毎度助かってるよ。」
「まぁそれにしたってM9mcの方ばっかりに負荷がかかってるなガンブレードの方は比較的少ない。」
「それに関してはやっぱり陽動に使う分の差だろうな。」
「なるほどそういう感じか。もっと早い連射に耐えられるようにしてトリガーの重さはどうだ?」
「もうちょい軽くてもいいかな。」
「了解。試しに軽くしてみよう。ガンブレードの方はどうだ?」
「そうだな。もうちょっと軽くして欲しいかな。高速機動時に少しだけ重心を持ってかれる。」
「なるほどなまぁこいつは試作機だからなぁ。そうだ。試しに空に渡してるのでも使ってみるか?」
「空に渡してるもの?」
「もっと軽くて刃の短いナイフタイプのものを渡してるんだ。」
「なるほど...まぁ俺はこれくらいの長さのがいいので。」
「そうか?まぁデータが取れればなんでもいいが。」
「そんなにデータが欲しいならもっと用意して配ればいいのに。」
「お前なぁ...これ使えるやつなんて限られてくるからな?」
「...?なんで?」
「この反動を扱える方がおかしいんだよ。正直開発した俺でも無理だ。軍にこれを持ってかれなかった理由は使えないだからな。」
そう言えばガンブレードはレジスタンスに来る前にはできてたらしいからな。そういう理由だったのか...。
「じゃぁ使える人に頼めばいいじゃないか。例えば神島さんとか。あの人ならなんでも行けるだろ。」
「俺もそう思って渡してみたんだがな?実際にしばら振ってみて見てから『俺には合わないな』って言って返されたんだ。いやぁ残念だった。」
「会わないなら仕方ないな。あの人は俺ら我流組と違ってしっかりした流派があるみたいだからなぁ。」
「そうなんだがな?妙なんだよなぁ。」
「なにが」
「お前と同じものを渡したんだが、お前より見事に使いこなして見せてから返されたんだ。」
...マジか...ガンブレードの扱いですら負けてたのか...しかも訓練した俺より初めて触った神島さんの方がって...。
「はぁ....。」
「見た感じ本当に初めてなのか?って動きだったんだよなぁ。」
「そうか...。」
「なんだぁ?こいつですら負けて悔しいのか?悔しいなら鍛えるこったな。ハッハッハ」
「まぁそうだけどよぉ...。」
「まっそろそろメンテ始めるからよ少し外しといてくれや。」
「ハイハイ了解。」
先ほどと同じように少し肩を落として今度は作戦用の情報を聞きに情報局に向かう。
「美月さん作戦用の資料取り来たので資料お願いします。」
「はい。用意してきますね。」
情報局はまぁなんというか事務所と言った方が正しいのかもしれない。情報局とは言っても実際に情報を集めてきているのは他の部隊に所属する人らしいからな。実際俺もここに情報を入れることが多い。集まってきた情報を整理するのが主な仕事だ。局長は黒川 美月。第2部隊隊長黒川 真美とは姉妹らしい。身長自体は美月さんの方が少し高いが姉は真美さんの方で仲のいい姉妹だが、ちょっと真美さんが過保護気味らしいとか。
「資料こちらになりますね。」
「ありがとう。あっそう言えば由美も情報局でしたよね。います?」
「ちょうど今は外してますね。5分くらい前ならいたんですけど。」
「それは残念。では今日のところはここら辺で失礼します。」
「はい。作戦の成功お祈りしてます。あと情報の方もよろしくお願いしますね。」
「もちろんです。」
残念。最近由美が配属されたって聞いてちゃんと仕事してるか気になってたんだけどなぁ。
ちょうど昼頃だったので昼を食べつつ情報を確認しようと食堂へと向かった。
「今日の昼は何が用意されてるんだろうなぁ。ってうぉ!?」
「ん?なんだ大地か。」
「なんだじゃないわ。」
十字路で突然横から来た空にぶつかりかけてこっちはかなりびっくりしたのにあっちはあれって...。
「あっ大地だ。おつかれ〜。」
「なんだ由美も一緒だったのか。」
空と被っててすぐには気づかなかったが空の後ろからぴょこっと由美が顔を出てきた。
「人に『なんだじゃないわ』とか言っといて私はなんだなんだね。」
「いやなんかややこしいぞ...。」
「それでお前も昼か大地。」
「まぁな。」
「ちょうど良かった!じゃぁみんなで行こ。」
「そうだな。」
「あっそういえばさっき情報局寄ったんだけど由美ちゃんと仕事できてるか?」
「えっなに?情報局で何かあった?」
「いやただ気になっただけ。」
「ミスじゃないならいいけど。まぁ周りにフォローされつつなんとかって感じかな。本当は私だって前出て戦いたかったけどねぇ。神島さんがこっちに配属しちゃったから。」
「人には得手不得手があるからな。」
神島さんナイス!しっかり俺達の加入条件(というか目的)は守ってくれてるようだな。
そんな会話をしつつ食堂で昼食を取り始める。懐かしい感じがして楽しかった。そしてこんな光景を守ろうと目的を再確認することが出来た。面倒な仕事に気が落ちていたところで目的を再確認してやる気を出せたのはちょうど良かったな。
「さて昼食もとったし俺はトレーニングに戻る。」
「空お前今もあのトレーニング続けてるのか?」
「当たり前だろう?あれが1番効率がいい。」
「体を壊したら意味ないんだぞ?」
「そこまで馬鹿じゃない。」
そう言うと空は去っていってしまった。
「私も情報局に戻るね。大地も頑張ってね。」
「おう。」
由美も仕事に戻って行ったが正直空の体が大丈夫かというのが1番気になる。精鋭組の作戦に選ばれるだけあって実力はついているんだろうが...。
「何大丈夫だ。本人もそこまで馬鹿じゃないって言ってた通り上手くやってるよ。」
「うわっ神島さん!?なんでここに!?」
「うわって...普通に昼食だよ。」
突然話しかけられてついつい変な声を上げてしまった...。この人割と神出鬼没なんだよなぁ。あんまりアジトにいないから俺が全く把握できてないだけかもだけど。
「まぁそんなことより実際どうなんです?本当に大丈夫なんですか?あんな無茶なこと続けて。」
「大地が言ってるのは空の能力によりリミットを解放することで通常より高い負荷を筋肉にかける筋トレ方法のことだろう?まぁ大丈夫だろ。」
「...。」
「何そこまで心配するな。トレーニング後には八葉さんのところにも行ってるらしいし、ちゃんと何日かに1回とかにしてるからな。」
「まぁ大丈夫ならいいんですけどね。」
「幼馴染だけあって3人仲がいいから気になるのはわかるがアイツだって子供じゃない。自分のことくらい管理できるさ。」
「そうですよね...。」
「あっでも真似するなよ?あれはここだから出来ることだからな?今は突然動くこともないししっかりバックアップもある。軍なんかじゃバックアップはともかく突然動くことはあるからな。真似したらすぐ体壊すぞ。」
「あははははさすがにやりませんよ。」
神島さんの能力って読心とかじゃないだろうな...。めっちゃバレてるじゃん。
「私は資料に目を通さなければならないので失礼しますね。」
「あぁ任せたぞ。」
そう言って昼食を取りに行った神島さんと反対に俺は食堂をあとにした。さて、細部の確認をしっかりしなければな。
To be continuous...
どうもクロウです!今回は割と早かったかな?新しく始まった「異世界で宇宙をのぞむ」を投稿してからすぐ書き始めたのでさっさと投稿できた感じです。これからは交互に投稿していく予定ですよで是非あっちの方もこっちもよろしくお願いしますね。中について話すなら今回は組織内の裏方とも言うべき仕事の人達が何人か出てきましたね。彼らは前線でこそ戦うことは出来ませんが彼らがいなければ前線は成り立ちません。レジスタンスの活躍の裏の彼らの頑張りも忘れないであげてくださいね。