7話 帽子2
15時20分
「す、寒っ。」
授業終わり、そそくさと校舎を出る。校舎の中は程よく暖かいというのに、この気温差に身震いする忘太郎。朝早いから気づかないが、あたりを見渡すと、カッターシャツの上にカーディガンやセーターを着て制服の上着を羽織る生徒も何人かいた。
と、その生徒たちは皆一点を見つめていた。
ーーそうか。
覚えている。その白いつば広帽子、長い艶がある黒髪、その後ろ姿、自分のことを、過去を知っている……彼女。
ーーと、彼女はこちらに振り返る。と、途端に笑みを浮かべ、彼女は名を呼んだ。
「忘太郎。」
そういって、彼女は忘太郎に近づいてきた。そして、忘太郎の右手を掴む。
「冷たっ、て、何するんだよ。」
「もう、早く行こうよ。」
そういって彼女は手を引っ張り校門を抜ける。周囲からのざわめき。これを知られたら理事長に何言われるのだろうか。
15時30分
彼女に手を引っ張られたまま数分歩く。ただでさえ、手を繋いでいる相手は整った容姿をした女の子というのもあり、周囲からの注目を感じ、同時に一部から向けられる視線が痛い。
「なぁ、どこに行くんだよ。」
「もうちょっとだから。」
忘太郎が聞くと、こちらをちらりと見て笑みを見せ、すぐに前を向く。
「なら今のうちに教えてくれないか。」
「何を?」
それはそうだ。見ず知らずの女の子に手を引っ張られていて、しかも彼女は忘太郎自身のことを知っているというのだ。今のうちに聞けることは聞いておきたい。
「まず、名前は?」
「名前、名前は……恵。」
「ーー恵さん……ね。」
「恵でいいよ。」
「恵……まぁいいや、それもよりも、一番聞きたかったんだけど、君……とぉうっ。」
「あうっ」
恵は突然足を止める。と言ってもこちらが予期しているはずもなく、そのまま彼女にぶつかってしまう。
「あ、ごめん。」
「あぁ、いいよいいよ。それよりも、目的地到着!」
と、彼女は右手に指をさす。そこは……
「へ……てここ家じゃん……!!」
驚嘆してつい大きな声をあげて返す。家が近いというのも考えものだ。