4話 記憶
15:00 アパートに着く
学校からアパートまでは徒歩で数分。自分の部屋に入るなり、カバンを床に捨て置き、忘太郎はベットにダイブした。
「僕を知ってるって……はぁ。」
ため息をつく。昔あったことのあるという少女の言葉が、ずっと忘太郎の頭の中をループしていた。
河原忘太郎 どういうわけか、彼は高校入学以前の記憶が全て”欠落”している。
路頭に迷い理事長に引き取られたということはわかっているが、それ以前の記憶が一切ないのだ。
そもそも、忘太郎という名前自体、名前の記憶をも失った彼につけられた名前であり、本当の名前ではない。
過去の記憶がないだけでなく、夜眠るとその日の記憶の一部が”欠落”してしまう。それを確かめるため、理事長は毎朝、駄洒落を覚えているのかを問う。ただ、実際これをする意味があるのかは謎なのだが。
物忘れがひどいというのは確かに生活に不便が生じるのだが、全てが決して悪いものとは思わなかった。
どうやら消える記憶には優先度があるらしく、『負の記憶』つまり辛い記憶であれば優先的にその記憶から消える。これのおかげで忘太郎は”あのようなこと”が日々起きても精神的な安寧を確保することができている。
自分自身の過去を知る少女が現れたことに興味が湧いたのは事実だった。あるいは恐怖か、どちらなのかはっきりはしない。
とはいえそれを知ったところでこれまでの日常に変化があるわけでもなく、もしそれが『負の記憶』だとしたら、それを忘れてしまうかもしれない。
「はぁぁぁ。眠い。」
19:00 考えがまとめ終わる
思案を続け、幾分の時間が経過した。とりあえず、このように考えた。
もし明日も彼女が声をかけてきたら、少し話を聞いてみてもいい。いつもであれば理事長の令もあり人との関わりを可能な限り避けてきたが、深入りさえしなければ問題ないだろう。
ーーどちらにせよ、覚えていれば、だが。
まとめ終わり、忘太郎はレトルトおよびカップ麺置き場と化している台所からカップ麺を取り出し、お湯を注いで食したのち、入浴してその日は就寝した。
明日の予定 校門にいる他校生?の女の子が声をかけてきたら話を聞く