悲しみの理由
夢を見た。
物悲しい夢だった。
けれどもそれは、目覚めと共に消えてしまい、ただ――悲しみだけが胸を抉る。
目元に手をやる。
乾いている。
ではどうやら、眠りながら涙を流すなどという無様は晒さずにすんだようだ。
残滓を手繰り寄せ、内容を思い起こそうと試みる。
記憶は曖昧で、掴んだと思ったそれは、即座に指の合間をすり抜ける。
おぼろげながらも残るものは、郷愁、そして悲哀。
それらが身体を支配して、気だるさが全身を包み込む。
――何故?
直近に、何かあったのだろうか。
思い当たる節は無い。
では、単なる人恋しさとでもいうのか。
納得しかねる。
寝返りを一つ。
そういえば、今日は幾日だったか。
カレンダーに目を向ける。
――ああ、そうか。
日付を見て、理解する。
あなたが逝って、もう、一年か。