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第6話

気絶して覆いかぶさってきた男の傍に転がる鉄の棒をそっと手に取り握り締める。

やはり魔獣相手には剣が有効かもしれないが、紫瞳ではない生身の人間相手にはこちらの方がいいかもしれない。

栗山にお礼を言おうと顔を上げた時に、栗山の視線が持っていた剣に向かっている事に気が付く。

「もしかして、余り何かを斬った事は無いのか?」

実戦経験が殆ど無さそうだ、と栗山は判断し、自分はこのラスタンのサポートに回った方が良いのかと考える。

しかしこのエールディンと言う世界が本当に剣と魔法のファンタジーなら、魔法を使う敵が出てきてもおかしくないのになーと疑問を感じずにはいられない。

「とにかく少しここで休もう。疲れを残したまま進むのは危険だ」


栗山の言葉に今までの戦闘を思い返してみたが、あまり1人で戦った事はない。

強いて言えば、仲間がつけてくれた稽古中に飛び出てきた魔獣位だろうか。

「僕よりも強い仲間が今まで倒してきてくれたから、あんまり自分で戦った事はないです・・・それに人間相手だと躊躇しちゃうし。」

剣を鞘に戻して、鉄の棒を右手に持ち替えると、ラスタンは床へ腰をついた。

短い休憩の間、ラスタンは自分の旅の目的、自分の父親を行方を捜している事を栗山へ話し始めた。

「なるほどなぁ、その親父を探して旅をしているのか」

ラスタンの身の上話を聞いていた栗山だが、どうにも実感がわかない。自分には家族と言う存在が無く、父親や母親を感じたのも4歳までだった。

それでも父親を探して若いのに旅をすると言う事はさぞかし過酷だろうと思わずにはいられない。

「なかなかの仲間にも恵まれている様だし、無事に親父が見つかると良いな」


栗山の優しい言葉に、ラスタンはにっこりと微笑みお礼を言う。 そしてもし栗山が元の世界に帰れなかったら、一緒に父親を探してもらおうと心に秘める。

大きく息を吐いて立ち上がり、ズボンについた埃を手で払い部屋の中を散策した。

部屋は行き止まりではなく、先へと続く通路が部屋の奥にあったのを見つける。

「・・・行ってみます?」

ラスタンが見つけた通路を見て、栗山はまず人の気配を窺う。

「こっちはまだ大丈夫そうだな・・・・こいつ等が他の連中に見つかる前に進むぞ」

この倒した連中が他の奴等に見つかると厄介なので、栗山はラスタンを先導する形で通路の先へと進む。

「俺は前を確認しながら進む。後ろは任せる」

そして通路を進む2人だったが、そんな2人の前に思いも寄らない出来事が!!


ちかちかと点滅を不定期に繰り返す電球を気にしながら、ラスタンは後ろに気を配り歩を進める。

辺りは2人の足音以外は、その電球の点滅を繰り返す音しか響いていない。

さっきまで見回りをしていた人間が1人もいないのも妙な気がして、鉄の棒を握る手に力が入る。もしかしたら、何か特別な部屋へと繋がっているのかもしれない。 少女を連れ去ろうとしたあの4人組の男達もまだこの建物の中で姿を見ていない。

ラスタンに後ろを任せ、栗山は壁を使って先を油断無く見通して進む。 しかしそれも長くは続かなかった。

(やけに静かだ)

こんなに静かだと言うことは、どうやら悪い予感がさっきからしているのにもちゃんとした理由があるらしい。

そしてその理由を示すかの様に、曲がり角に来た途端にいきなり大斧を持った男が殴りかかって来た!!


後方へ注意を払っていたラスタンはその男に気付くのが遅れてしまった。

幸い栗山の後ろにいたおかげで咄嗟に身を引いて相手の全体を見通す事が出来た。

大斧は当たれば大怪我、悪ければ即死に繋がる。

武器を何とか手から離せば勝機はあると踏み、ラスタンは鉄の棒を男の腕目掛けて振り下ろす。

ところが予想外にも、男の腕に当たった鉄の棒は衝撃でL字に曲がってしまった。


ラスタンの援護のおかげで男が一瞬怯む。

その怯んだ男を栗山は見逃さず、まずは男ののど仏目掛けてストレートパンチ。

男が急所へのパンチで身体をくの字に折り曲げた所で、今度はその男の頭に全力でかかとを落とす。

そうして床に倒れこんだ男の手から大斧を奪い取り、待ち伏せで通路の奥から襲い掛かって来る男達目掛けて一直線に投げる。

自分も斧を投げると同時に走り出し、その斧で怯んだ男達の1人に強烈なドロップキックをかました。


栗山の衝撃的な早技を目の当たりにして、ラスタンは目を点にする。

自分とは桁違いな強さに驚きながら、力の抜けた手から落ちてしまった棒を拾い栗山の後へついていく。

先程の男の腕に曲げられた鉄棒を見ながら、ラスタンは違和感を覚えた。硬化の魔法がかけられていた気がして、ラスタンは男達へ1人立ち向かっている栗山へ叫ぶ。

「魔法を使える奴がいます!」

「はっ!?」

魔法と言う単語に反応した栗山の隙を突くかの様に、1人の男が魔法を使う。

それはどうやらスタンダードなファイヤーボールのような物で、文字通り火の玉を撃ち出して来た。

しかし軌道は一直線だったので、目で追いきれない銃弾を避けるよりは簡単だと栗山はしゃがんで回避。

そのまま低い姿勢を利用して魔法使いに一気に近付き、魔法使いの両足を掴んでジャイアントスイングで顔面から横の壁へと叩きつけた。

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